研究課題/領域番号 |
23593133
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西村 ユミ 大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 准教授 (00257271)
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研究分担者 |
前田 泰樹 東海大学, 総合教育センター, 准教授 (00338740)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 実践知 / 病院看護 / 協働実践 / 現象学 / エスノメソドロジ― |
研究概要 |
研究代表者が所属する施設内の研究倫理委員会の承認を得て、東海近県の約500床の総合病院に研究協力を依頼して、調査を開始した。調査への参加者は、病院の副院長/看護部長、副看護部長、師長、係長、及び急性期病棟の看護師約20名であった。調査場所は、主に、看護部管理室と1つの急性期(呼吸器・循環器内科)病棟であり、約2週間にわたって、調査者2人が看護師に伴走をしつつフィールドワークを行い、出来事の詳細をフィールドノーツに記録した。調査期間中には、看護部が主催する師長会や各種委員会、病棟のカンファレンスなどに参加をして、音声データと映像を記録した。フィールドワーク中に気になったことは、調査期間中、及び不定期に病院を訪問して、個別インタビューによって聞き取った。 得られた音声データ、及び映像は、逐語記録におこして整理した。逐語記録及びフィールドノーツをもとにして、各部局において協働実践がいかに編成されているのか、そこにはいかなる知が組み込まれているのかを、現象学、及びエスノメソドロジ―の考え方を手がかりにして複数の視点から分析している最中である。 研究成果は、1つの学会誌(科学研究費補助金基盤研究(C)、課題番号19592441の発展研究として成果を報告)、2つの学会、及び複数の学会や研究会のシンポジウム等において、"準備性""音の経験""時間の編成""時間の区切り""師長の実践"などの視点から、協働実践の編成のされ方について報告した。多分野の研究者と議論を交わし、多くの示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究では、看護部管理部門と1つの病棟をそれぞれ調査しつつ、両者の関係をみていくことを予定していたが、看護部管理部門への各病棟からの報告を聞いたり、副看護部長とともに全病棟をラウンドすることを通して、病医全体の患者の状態や看護実践の状況を把握する方法を体験することができた。それによって、本研究で目指している「病院の看護」の編成のされ方を分析する手がかりを得ることができた。また、それらを知りつつ病棟の調査を行うことによって、看護部からの伝達事項がいかに活かされたり浸透したりするのかを把握することができた。 複数の学会や研究会でこれらの成果を発表する機会を得て、多分野の研究者や実践家と議論をすることができ、分析のヒントを得ることができた。さらに、国際学会での議論を通して、他国の実践のあり方との比較をすることができた。 加えて、学会発表等の議論をもとに、論文を投稿する準備を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、昨年度に引き続き、総合病院の看護部での調査を行うとともに、新たな協力病棟や外来などのフィールドを開拓して、複数病棟間の交流や看護部とのやり取り等々について調査を行い、病院の看護がいかに作られているのかを探究する予定である。また、これまでの調査は、日勤帯が中心であったが、夜勤や中勤などの時間帯の調査も行っていく予定である。 また、年度が変わったことによって、看護部の管理部門のメンバー、病棟のメンバーに変更が見られているため、こうした人の異動が、病棟の看護をいかに再編成していくのかについても調査を進める予定である。 研究成果の公開については、既に日本保健医療社会学会での発表が決まっており、引き続きQualitative Health Research Conference、及び日本看護科学学会等でも発表を行う予定である。さらに、前年度に学会で発表をした内容については、論文にまとめて投稿をする予定である。すでに、論文を投稿する準備も進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、大きく2つの研究活動を行う予定である。 1つ目は、集中的なフィールドワークである。調査対象としている病院の近くに宿泊をして、約2週間のフィールドワークを行うため、また不定期に、個別インタビューを実施するために、旅費を計上している。加えて、調査によって得た音声、映像データの逐語記録を作成するために、その他として委託料、及び人件費・謝金を計上している。 2つ目は、学会への参加である。すでに、国内において1学会での発表が決まっている。複数の、国内外での学会発表を予定しているために、学会参加費と旅費を計上している。
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