研究課題/領域番号 |
23593134
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井上 智子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80184761)
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研究分担者 |
阿曽 洋子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80127175)
伊部 亜希 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80452431)
辻本 朋美 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00510885)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 静脈留置カテーテル針 |
研究概要 |
末梢静脈内留置カテーテル針による輸液療法(以下、IV)は頻繁に行われる医療行為であり、診療の補助業務として看護師が穿刺・留置を行うことも多い。穿刺や留置の成否には、穿刺前の血管アセスメント能力が大きく影響し、的確なアセスメント能力に基づく穿刺技術が重要となる。Infusion Nurses Society によるIVナースの養成課程で触知による血管認識の訓練が繰り返し行われていることから、看護師が血管状態(太さ、走行、深さ)を確実に判断できることが静脈留置カテーテル針の穿刺技術向上に必要である。 そこで今年度は、病棟看護師による血管アセスメントの実態を明らかにすることを目的として、病棟看護師16名を対象に血管アセスメント能力について超音波診断装置を使用して調査した。その結果、経験年数が5年未満の看護師は、経験年数が5年以上の看護師と比べ、静脈留置カテーテル針の穿刺・留置に不適切な血管を選ぶ傾向が認められた。 また、IV熟達者の技術の可視化・言語化にむけて、優れた技術が求められる診療の場で実際に行われる静脈留置カテーテル針を用いた末梢静脈からの輸液療法の適用場面を、カテーテル針の穿刺・留置に焦点を当ててビデオカメラで撮影し、複数の撮影画像の分析を通して暗黙知の技術を形式知に変換し、現任教育に活用でき得る知識を創造しようとする研究を計画した。この計画に関しては、研究協力者を得る過程で時間を要し、24年度から実際の撮影に入る予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、優れた技術が求められる診療の場で実際に患者に行われる、静脈留置カテーテル針を用いた末梢静脈からの輸液療法の適用場面を、カテーテル針の穿刺・留置に焦点を当ててビデオカメラで撮影し、複数の撮影場面の分析を通して暗黙知の技術を形式知に変換し、現任教育に活用でき得る知識を創造することを目的としている。しかし、診療場面で実際に行われる輸液療法の適用場面の撮影に協力する病院・協力者を得る過程は、予想以上に時間を要し、協力病院と協力者を得ることができたのは23年度3月となった。 その間、撮影機器の選定や撮影方法、および撮影画像の編集方法について検討し、鮮明な画像を得る撮影機材・要件を決定した。 さらに、23年度は穿刺・留置技術の基礎となる血管アセスメント能力の実態を調査し、1年未満の看護師には血管径を識別するための練習が必要であり、留置針の長さの範囲に静脈弁が存在しない位置を識別するための教育も必要であることが明らかとなった。そのためモデルや超音波診断装置を用いることで、静脈留置カテーテル針の穿刺・留置に関する基礎技術を向上させる必要性を示すことができた。 また、本邦では末梢静脈からの輸液療法の適用で静脈留置カテーテル針を用いた場合の穿刺成功率を具体的に示すデータはない。そこで看護師経験年数と穿刺成功率の関係を示す基礎データを得るための調査に協力する病院を探し、当該協力病院と協議を重ねて24年度に基礎データの収集を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.診療の場で実際に行われる静脈留置カテーテル針を用いた末梢静脈からの輸液療法の適用場面の撮影について:本計画に関する倫理審査の承認は既に得ており、協力病院との具体的な協議を進めている段階である。撮影要件を満たす機会が与えられれば、すぐに撮影に入る予定である。2.静脈留置カテーテル針の穿刺・留置に関する基礎技術を向上させる学習プログラムについて:静脈留置カテーテル針の穿刺・留置に関しては、新入職者を対象に集合教育による学習プログラムを行う病院が多い。しかし、集合教育だけで技術を習得することは困難で、OJTの中で指導が継続されているという現状がある。そこで、いつでも、どこでも、個人による自己学習が可能な練習用具を準備し、その効果を検証する予定としている。3.末梢静脈からの輸液療法の適用で静脈留置カテーテル針を用いた場合の穿刺成功率を示すデータ収集について:アメリカではIVナースの穿刺成功率や看護師経験年数と穿刺成功率の関係を示すデータがあり、教育プログラムの評価や教育効果の基準を示すものとなっている。本邦においてもこれらのデータを得るべく、協力病院との協議を経てデータ収集を開始し、その実態を明らかにするとともに、看護師経験年数や穿刺経験回数が技術の習得にどのように影響するかを検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.診療の場で実際に行われる静脈留置カテーテル針を用いた末梢静脈からの輸液療法の適用場面の撮影について:撮影機材1セットと画像解析専用のPCとソフトウェアを前年度に購入している。撮影画像の蓄積状況によって異なるが、画像分析のための加工に、人件費・謝金を充てる予定である。2.静脈留置カテーテル針の穿刺・留置に関する基礎技術を向上させる学習プログラムについて:いつでも、どこでも、個人による自己学習が可能な練習用具の試作に関連する消耗品費、実際の練習に用いる針やテープ類等の消耗品費を計上する予定である。3.末梢静脈からの輸液療法の適用で静脈留置カテーテル針を用いた場合の穿刺成功率を示すデータ収集について:約250名の看護師が実施する穿刺記録の整理とデータ入力、および記述統計の整理等に関して人件費・謝金を計上する予定としている。4.研究成果の発表について:23年度の研究成果を第38回日本看護研究学会学術集会(於.沖縄コンベンションセンター)で発表する(2題)他、第43回日本看護学会 総合看護(於.静岡市)で2題の発表を予定しているため、その参加費・旅費に充てることとする。
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