研究課題/領域番号 |
23593135
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松浦 正子 神戸大学, 医学部附属病院, 看護師 (30379440)
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研究分担者 |
高岡 裕 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (20332281)
前田 英一 神戸大学, 医学部附属病院, 特命教授 (70322196)
一瀬 晃洋 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (90362780)
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キーワード | 看護学 / 医療・福祉 / 情報工学 / 臨床 |
研究概要 |
本研究は、視覚障害を有する患者の医療情報へのアクセシビリティ向上を目的としており、神戸大学で開発した点字文書提供システムを用いた点訳用の文書の整備と、病院内での点字文書の運用体制の構築に取り組む。今年度は、(1)本研究で使用中の自動点字翻訳プログラムeBrailleの改良と新サーバへのインストール、(2)患者へ点字文書を渡すまでのフローチャート案の作成、また、前年度に引き続き(3)患者に配布している患者向けの文書の収集と点訳用の文章修正、を実施した。 (1)により、計算処理能力の高い新計算機での自動点訳を可能とした。また、(2)点字文書の作成、印刷、患者へ手渡すまでのフローチャートは、当院が所有している点字プリンタや立体コピー作成機の台数と院内の患者の動きを考慮し作成した。具体的には、紙でオーダーを発生させ点訳したいテキストデータを点訳サーバに送る。次に、eBrailleで点訳した電子データを担当部署に戻し担当者が内容確認した後に点字印刷し、受付や会計等で患者に渡す。ここで明らかになった技術的な課題は、病院情報ネットワーク内に自動点字翻訳システムを繋ぐ必要性と、システム間連携の仕組み(インターフェース)を作る必要性があることである。他方、点字文書に関連が深い看護部と薬剤部から病院内業務との整合性について検討すべく、看護師や薬剤師等の病院職員に意見を求めた。その結果、「特に問題はないと思う」という意見と共に、「病状説明など、文書の内容によっては、医療従事者が患者に説明する際に文書も渡せると望ましいのではないか」という意見を得た。本件は、印刷機の台数や設置場所、システム連携等の問題から即時の実施は困難である。今後解決すべき課題を洗い出して行く必要がある。(3)の患者向けの文書は、点訳用の修正に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に購入した新サーバに自動点字翻訳プログラムをインストールし、新たに点訳サーバを構築した。また、点字文書の運用体制の確立のため、患者へ点字文書を渡すまでのフローチャート案を作成し、当院の医療従事者から意見を得た。また前年度に引き続き、病院内で患者に配布している患者向け文書を収集し、点訳の前処理として文章の修正に取組んだ。以上の取り組みに加えて研究成果として論文(計5本)や学会発表(6回)を行い、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、点字文書の運用体制の整備に取り組む。その確立後、評価を行なう。 ・点字文書の運用試行と運用体制の評価 [担当:松浦、高岡、前田、一瀬、池上] 確立した運用体制の下で、患者向け文書を点訳と点字文書の病院内での運用に取り組む。運用体制は、真正性、見読性、保存性等を基準とし、視覚障害者の意見に加えて、病院職員等から現場の意見を収集して、実現に向けた課題を明らかにする。課題を洗い出した後に、病院内での安定的な運用と医療安全を重視し、課題の解決方法を検討する。その際、特に前年度に明らかになった、病院情報システムとの一体運用の可能性も検討する。具体的には、一般研究用とは別の回線である院内専用回線への自動点訳サーバの接続に際しての課題などを明らかにしたい。 これらの研究成果を学会発表や論文発表等で、広く発信していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、点字文書の運用体制の確立のための院内の情報収集や各部署との調整、点字文書の修正のために研究支援者を雇用する。また、運用体制試行のための消耗品を購入し、研究成果の発表・関連研究の情報収集のための国内旅費等で研究費を使用する予定である。
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