研究課題/領域番号 |
23593144
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
太田 晴美 札幌市立大学, 看護学部, 助教 (90433135)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 災害看護 / アクションリサーチ / 災害看護教育 / 日常看護 |
研究概要 |
本研究のH23年度の目的は、災害看護に興味を持っている看護師に研究協働者として参加してもらい、日常看護とのつながりを意識できる実行可能で具体的な災害看護教育(訓練)を策定・提示する。災害看護に携わる看護師ネットワークを形成し、災害看護教育(訓練)を複数回行ない、研究協働者自身の変化と相互支援の有益性を明らかにする(H23-25年度)ことである。H23年度は研究協働者を募り、ワークショップ(以下WS)を4回開催した。第1回目WSで、日常看護と災害看護の共通性を共有し、日々の看護実践の中で災害時に有効な能力として(1)コミュニケーション能力(2)安全(環境整備/危機管理能力)(3)看護技術・アセスメント能力(4)リーダーシップ・メンバーシップ(5)情報収集・伝達・共有する能力(臨機応変な表現力)(6)精神・身体の健康管理を抽出した。第2回目WSでは、日常看護と災害看護に共通性があるということを臨床看護師へ教育していくための目的・目標を設定した。立案した目的・目標を第3回目WSで再度議論・修正し、メンバー全員の一致の元、本研究協働者が教育展開を実施する目的・目標を策定した。【目的】日常看護と災害看護のつながりを考え看護の幅を広げる。【目標】1.日常看護と災害看護の共通部分を理解できる。2.災害時に取るべき行動が理解できる3.看護に対する自己の変化を認識できる。第4回目WSでは、策定した目的・目標を達成するための方法として、考えられる教育プランの内容を議論し、エマルゴトレーニング(災害訓練)、シミュレーションやグループワーク内容など候補案が抽出できた。また災害看護教育実践に向けては、自らのファシリテーションスキルの向上を図らなければならないと研究メンバーで学び合うことも検討された。メンバーの組織化を行い、統括者、訓練チーム、グループワークチーム、スキルアップチーム、支援チームに編成し活動を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H23年度計画では研究協働者を募集し(1)研究協働者と「日常につながる災害看護」を共に考え組織化を行う。(2)「日常看護につながる災害看護教育」方法を検討する。(3)教育方法に基づき、災害看護教育(訓練)実施する。(4)実施した教育の結果を研究代表者・協働者間で意見が一致するまで協議し評価することまでを計画していた。倫理委員会審査承認後に研究協働者を募集し、WSを4回(6日間)行ってきたが、アクションリサーチでは、研究者と研究協働者(研究メンバー)で一致するまで話し合いながら進んでいくため、一人でも意見が合わない場合には、議論をし続ける結果となり、時間が超過してしまうこととなる。H23年度は、災害看護教育の目的・目標策定に相当数の時間を費やし、当初予定していた災害看護教育計画立案・実施・評価まで到達することができず、計画からやや遅れている。 しかし、全員が「この目的・目標」という目指す方向性を納得(合意)ことにより、研究参加メンバーは、目的・目標強く意識しながら研究方法を検討することができている。また、徹底的に議論を行うことにより、参加メンバーがWS終了時に「言い足りなかった」「自分の意見を聞いてもらえなかった」という不消化な状況を起こすことなく、達成感を得ている。このように全員の合意が得られるまで議論することは時間を要するが、本研究目的の一部「研究協働者自身の変化」に大きくかかわることができるため、必要な時間であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでWSは、研究者が研究協働者企画運営をしてきたが、今後のWSは研究協働者の役割分担が明確になったことから、研究協働者を主体に開催しデータ収集する。今年度の研究データは、WSの議論内容、研究協働者の行動変容、災害看護教育方法策定プロセスと実践から収集する。H23年度(10月ごろを目標)に、メンバーで立案した災害看護教育を実践できるよう、研究メンバー全員で準備を進める。その後、実践した災害看護教育を評価し、改善プランの立案を行う。いずれのプロセスにおいても、研究メンバー全員の意見が一致する(合意が得られる)まで、議論を行いながら進めていく。WS回数は、研究メンバーとの調整で決定し、必要回数(最大年間10回まで)行う。 実践プラン(災害看護教育)実施にあたっては、研究メンバーが災害看護教育の知識や技術を得る必要性がある。特に東日本大震災から1年が過ぎ、各学会やセミナーなどでも災害に関する知識や技術の見直しが行われていることから、本研究では災害看護教育を立案・実践・評価するに当たり、研究者・研究協働者が最新の知識を得て、より有効な災害看護教育を策定していく。そのため必要に応じて研究者・研究協働者が学会やセミナーに参加する。 アクションリサーチは、研究者と研究協働者それぞれが内省を繰り返し、学びを得て成長をしていくことにも寄与することとなる。したがって、学びのプロセスを研究者並びに研究協働者が学会等で発表をしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は、H23年度に引き続きWSを行い、災害看護教育の立案し実践するために、参加者謝金が必要である。なお、WSは研究メンバーで必要回数(最大10回まで)を行う予定である。災害看護教育立案のために、災害看護教育訓練に必要な物品(無線機、ムラージュ、非常食、災害非常持ち出し物品、応急救護物品、識別衣、災害被災地での生活グッズ等)を購入する。本研究でデータは、ワークショップ談話、教育(訓練)実施、教育プログラム参加者ヒアリング、研究代表者・協働者の内省等、多様な形態で収集されるため、膨大なデータを取り扱うこととなる。そのため、研究補助者を雇用し、データ入力・分析補助を依頼する予定である。 研究者・研究協働者が最新の知識を得て、より有効な災害看護教育を策定していくため必要に応じて研究者・研究協働者が学会やセミナーに参加する旅費並びに参加費を支出する。またアクションリサーチは、研究者と研究協働者それぞれが内省を繰り返し、学びを得て成長をしていくことにも寄与することとなるため、学びのプロセスを研究者並びに研究協働者が学会等で発表するための旅費・参加費を支出する。 なお、H23年度に予定していた災害看護教育(訓練)の実践がWSの進捗により、遅れている。そのためH23年度予算の残額を今年度のWS並びに災害看護教育(訓練)実践に充当する。
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