研究課題/領域番号 |
23593155
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
菊地 悦子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 講師 (90307653)
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キーワード | 看護管理 / 高齢者長期ケア施設 / 日常倫理 / 倫理的意思決定 |
研究概要 |
24年度は、高齢者長期ケア施設において、施設スタッフが日常倫理に基づいたケア方法を検討し決定することを支援する看護管理実践を明らかにするために、23年度の収集した看護管理者のインタビューデータの分析を実施した。 看護管理者10名のインタビューから、自施設で日常生活の援助に倫理的問題があると看護管理者が判断し、看護管理者が介入することで改善をした事柄として35場面が抽出された。看護管理実践としては、82の直接介入、54の組織内のしくみの改善が抽出できた。 日常ケア実践において倫理的意思決定を行うこと、そしてそれを継続的にケアを提供できる要因としては、ケアスタッフ個人の要因、ケアチームの要因、組織全体に関わる要因があると思われた。看護管理実践としては、スタッフ個人へは、個人の力量に差が大きい介護スタッフへのOJTを中心とした直接介入、ケアチームへは、チームリーダーを育成しチームの成長を促す介入、介護専門職としてスタッフが誇りをもてるような介入、チームでケア方法が検討でき、結果を評価できるような介入を行っていた。組織全体に関わる管理実践としては、施設の経営部門と高齢者の尊厳を尊重するという施設理念を具現化するための具体的アクションプランを共有する、ケアニーズに合わせたケア供給ができるような人員配置などを行っていた。 以上、本年度は、データを丹念に読み返すことで事実に忠実に、看護管理者が高齢者長期ケア施設のケア実践で倫理的問題があると認識した場面、その要因を看護管理者はどの様に考え、どのような看護管理実践を行い、結果がどうであったかを抽出した。その過程で信頼度を上げるために複数の研究者にスーパーバイズを受け分析までを終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度は、23年度に収集した看護管理実践者のインタビューデータから、高齢者長期ケア施設で、日常ケア実践における倫理的意思決定ができるように管理者として介入し、成果が得られた看護管理者の実践を抽出し、概念分析、理論モデルまでを作成する予定であった。データ分析の過程で、語りの内容をより忠実に読み取るために、複数の研究者にスーパーバイズを受け、スーパーバイズを受けた結果をもとに、修正を繰り返し、語りの内容を抽出することに時間をかけた。その結果、当初の計画より遅れが生じている。しかし、理論モデルを作成する上で、質的なデータ分析は妥協ができない部分であり、最終的に看護管理介入を明確にするうえで、時間的な支障は生じないと思われる。しかし、インタビューデータの分析から、看護管理者は、概ね5年から6年にわたり継続的な介入を行った結果として、日常ケア実践が、高齢者の尊厳を尊重するものへと変化するという成果を出していることがわかった。3年間の研究の到達目標を、組織に応用し、実現の可能性、有用性、効果を評価することは、現実的に難しいことがわかった。24年度の結果をふまえて、看護管理実践モデルの有用性の評価を、高齢者施設での看護管理実践経験者による専門家会議と、国内広域の現役の高齢者長期ケア施設の現役の看護管理者を参加者にした、デルファイ法にて看護管理実践モデルの妥当性の検討を行うまでが、本研究の限界であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度に実施したインタビューデータの分析から、看護管理者は、概ね5年から6年にわたり継続的な介入を行った結果として、日常ケア実践が、高齢者の尊厳を尊重するケア方法に変化していったという成果を出していることがわかった。3年間の研究の到達目標を、組織に応用し、実現の可能性、有用性、効果を評価することは、現実的に難しいことがわかった。そこで、研究の計画を修正し、25年度の最終的な研究の到達は、国内の高齢者長期ケア施設の現役の看護管理者が作成した看護管理実践モデルに合意できるかまでに修正した。 25年度は、 1.現在までのデータ分析で抽出した、高齢者長期ケア施設における日常倫理の問題と看護管理実践から概念を抽出し、その関係を図式化する。図式化した看護管理実践モデル図を、高齢者施設で高齢者の尊厳を尊重した日常ケア実践にするための管理的介入の経験者をパネリストにした専門家会議を開催し、モデルへの評価、できるだけ多くのその他の看護管理実践経験の収集を行い、モデルの修正を行う。 2.修正した看護管理実践モデルの妥当性を検討するために、国内広域の高齢者長期ケア施設の現役の看護管理者を参加者として、郵送によるデルファイ法にて、作成したモデルとその構成要素に合意ができるか、できない部分があるか、などの結果を基にモデルを修正し、最終的には、合意形成ができる看護管理実践モデルを作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.作成過程の看護管理実践モデルの妥当性を検討するために国内の研究者から意見を聞くための費用。主に研究者の旅費 2.高齢者施設への研究依頼のための出張旅費。 3.実践モデルの評価のために、国内の広域の看護管理実践家からの意見を集めるために必要な旅費、謝礼、専門家会議開催に関わる諸経費。これには23年度研究費の繰り越し分を使用する。 4.デルファイ法による妥当性を検討するために必要な郵送、通信費、および謝礼に関わる費用 5.以上の過程で必要なディスカッションの録音のテープ起こし、データ分析後の入力業務に関わる諸経費
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