研究課題/領域番号 |
23593161
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研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
白鳥 さつき 長野県看護大学, 看護学部, 教授 (20291859)
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研究分担者 |
渡辺 みどり 長野県看護大学, 看護学部, 教授 (60293479)
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キーワード | 看護師の労働安全衛生 / 職業感染 / 職業性抗がん剤曝露 / 職業性放射線被ばく / ラテックスアレルギー |
研究概要 |
本研究は看護職者の職業由来による健康被害(危険)について明らかにし,効果的な教育プログラムの開発を目的としている. 平成23年度は①「職業感染」②「抗がん剤への曝露」③「ラテックスアレルギー」④「患者・同僚及び第三者による暴力」について,知識とリスク認識の程度について明らかにした.対象は関東甲信越地方10都県で対象施設及び対象者は,200床以上の病院,200床未満の病院および老人保健施設を10都県から無作為に各県10施設,計300施設を各領域の調査対象施設が重複しないよう抽出した. 結果,①「職業感染」では,標準予防策に必要な物品やマニュアルなどの整備が施設間に差が見られ,200床未満の病院や老人保健福祉施設で整備されていない現状が明らかとなった.②「抗がん剤への曝露」は,化学療法中の患者ケアに携わっているものは72.9%で11.4%が調剤をしていた.しかし,個人防護具の使用は51.9%であった.③「ラテックスアレルギー」は,自身のIgE抗体を把握している者は17.6%であった.④「患者・同僚及び第三者による暴力」は,日常的に暴力やハラスメントを受けている者が42%存在した.これらから,看護職者は常に労務上,危険に晒されていながらリスク認識が十分ではないことがわかった. 平成24年度は,「職業感染予防」「抗がん剤曝露予防」の研修会を実施し,安全確保のプロセスで重要な技術や知識について確認した.さらに,全国の看護管理者を対象とした郵送法による調査を実施した.内容は平成23年度の4領域に「放射線被ばく予防」「交代制シフトによる心身への影響」の2領域を加えた.全国の病院から無作為抽出した500施設のうち,承諾の得られた178施設の看護管理者2844名に配布し,回収数1,723部(60.6%),有効回答数は1,663部(58.5%)であった.結果は分析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の調査では看護職者の職業上の安全管理に関する知識と予防行動に関する実態が把握できた.標本抽出が関東甲信越地方と限定されたため母集団を反映するには限界があった.しかし,200床以上の病院,200床未満の病院,老人保健福祉施設と組織規模,病院機能による違いをあきらかにすることができた.施設規模や機能別によって組織的な対策や個人の知識や予防行動も差があることがわかった.従って,今後は施設規模や機能別に課題を明確化し,各施設の実態に合った教育を企画・実施する必要があることが示唆され,検討に入った. 平成24年度は「職業感染予防」「抗がん剤曝露予防」に関する研修会を開催し,必要な知識や技術を教授するとともに,浸透している知識や技術,ほとんど浸透していない知識や技術など特徴が明らかになった.この研修の成果によって,研修会で重点を置くべき内容や予防策の実践への示唆を得ることができた. 平成24年度は,23年度の調査を基に全国の看護管理者を対象とした調査を実施した.結果は分析途中である.看護職者へのインタビューは8月以降に予定している.得られた結果は看護管理者複数名と検討し,プログラム作成への手掛かりを得る予定としている. 以上から,調査と分析はほぼ予定通りである.
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今後の研究の推進方策 |
1.2年間の量的調査の整理と分析:概略は分析できているが施設別,職位別などの詳細は平成25年に実施する予定である。 2.研修課実施の評価と課題の明確化:詳細な分析の後に,看護職者の職業上の安全を守るための現状の課題を明確にする.また,研修結果を評価し,教育プログラムに反映する. 3.分析結果を基に,共同研究者による看護職者の労働安全衛生の課題の明確化:共同研究者間で情報を共有し,ディスカッションによって分析結果から課題を明確にする. 4.課題を解決するための教育的介入の検討(病院看護部管理者のスーパーバイズを受ける):複数の病院看護管理者からスーパーバイズを受けて教育プログラムの内容を精選す る.
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次年度の研究費の使用計画 |
1.会議費(スーパーバイズを受ける看護部長の交通費および日当)120,000円程度を予定している.内容は,職業感染予防および抗がん剤暴露予防に関する教育プログラム(案)の検討会の開催費用とする. 2.インタビュー対象者への謝礼として図書券を予定している.教育プログラムを実施した病院の看護師へのインタビュー5~10人を依頼する予定.図書券1000円×10人=10,000円程度を予定する. 3.成果公表に3名を予定している.内容は,国内学会参加費及び交通費(日本看護管理学会,日本看護科学学会,日本看護福祉学会他)100,000円程度,海外における学会発表(韓国予定)300,000円程度を予定する.
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