研究課題/領域番号 |
23593162
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研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
太田 克矢 長野県看護大学, 看護学部, 教授 (60295798)
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研究分担者 |
竹内 幸江 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (00311902)
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キーワード | 輸液 / 気泡 / 抑制 |
研究概要 |
我々は「輸液ライン中の気泡発生を抑制する各種の方法を樹立し、患者の不安と看護業務の軽減」に寄与しようと考えている。 これまでにボトルを冷蔵保存することにより「輸液ボトルから、一定量の気泡をライン中に発生させる実験方法」を樹立、さらには「気相振とう法」、「超音波法」、「電子レンジ法」により、気泡発生をほぼ完全に抑制できることを報告した。この結果、「気相振とう法」で抑制処理に必要な最短の時間は35分間であったのに対し、「電子レンジ法」では、1~2分程度であることを明らかにした。 平成24年度は、「電子レンジ法の詳細な検討」と「機器による加温等を施さない、ボトルの温度管理による抑制法(以下、温度管理法)」の検討を実施した。 この結果、電子レンジ処理の際に行う、ハンドシェイキング処理の操作が気泡抑制の重要な要素の1つであることが示された。また、「温度管理法」では、冷蔵保存することにより気泡の発生しやすい状態の輸液ボトルでも、一定時間25℃で保存したのち、簡単なハンドシェイキング処理を行うことで、気泡を抑制する傾向が認められた。一方、同じ時間25℃で保存したものの、ハンドシェイキング処理を行わない比較対象実験では気泡が発生した。これは、気泡の発生要因の1つに、ボトルの保存時と使用時の温度差が大きく影響しているものの、温度管理だけでは抑制しきれず、ハンドシェイキング処理が必要である可能性を示した。方法論の普及を考えた場合、特殊な機器を使わないこの方法が最も有力である。そこで、現在、この方法の詳細な検討を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の最大の研究目的である、「電子レンジ法の詳細な検討」」については、目的を達成したといえる。この結果、ボトルを、4℃よりも高い各温度で保存した場合に発生する気泡について、必要な処理時間を詳細に明らかにすることができた。また、平成23年度に新たに検討すべき課題として浮上してきた「保存温度を管理することによる抑制方法(温度管理法)」についても、4℃でボトルを保存して気泡を発生しやすい状態にしたボトルについて検討の進展が見られた。本研究は、方法論の開発と方法論の普及の足ががりの樹立といえるので、空調があれば、特殊な器具を使用しないで済む「温度管理法」の発案は、当初の目的以上の成果があったと考えられる。 一方、「臨床での、抑制処理のニーズ」については、臨床現場で働く複数の看護師からの継続的な意見を得ることはできたものの、標本母体の大きな調査には至らず、特筆する進展は得られなかった。しかしながら、種々の抑制法の概略が決まらなければ、抑制処理にかかる手間をニーズ調査の際に伝えることはできない。また、抑制に必要な手間は、ニーズ調査にも大きく影響することが予想される。これらのことを総合すると、新たな方法論の開発の展開ができたことは、研究全体の目的を達する為の当然のストラテジーと考えられる。したがって、本年度の達成度は、おおむね順調に進展してると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
様々な温度で保存したボトルや生理食塩水以外の薬液について、温度管理法の詳細な検討を行い、方法論の樹立度を高めていく。この為、ボトルの保存温度を管理できるペルチェ式の小型冷蔵庫を数台追加購入し、検討する。また、平成23~24年度に、電子レンジ法の樹立を進める過程の中で、薬液内の溶存酸素を指標として実験を進められる可能性が示唆された。この為、平成25年度に温度管理法の検討の展開をはかる中で、溶存酸素計を実験のツールとして用い、研究のより迅速な進展をはかりたい。また、平成23年度に、現場の看護師らから、抗がん剤輸液の際に気泡の発生が多く、業務の負担が大きい旨の情報を得ている。この為、今まで以上に、検証する薬液の種類を増やすことで、方法論の汎用性の検証を行いたい。温度管理法のより詳細な検討結果が明確に示され、臨床応用の可能性が一定レベルを超えた場合、学内演習室で、実験室よりも臨床現場に近づけたシチュエーションでの抑制効果を検討する。さらに、この結果が良好と判断した場合は、臨床現場の看護師に示すことができる状態になったと考え、すみやかにニーズ調査の段階に移行していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に、温度管理法の樹立を進める過程の中で、薬液内の溶存酸素を指標として実験を進められる可能性が示唆された。従来までは、毎回、種々の状態のボトルを、実際に輸液ラインに流すことで検討を進めていたが、溶存酸素計(1台15~20万円程度)が実験のツールとして有用であった。この溶存酸素計の追加購入や関連する物品に研究費を使用する。また、「温度管理法」をさらに詳細に検討する為、摂氏1度単位で保存温度の設定ができる小型のペルチェ式冷蔵庫(1台10万円前後)を数台購入し、検討作業の効率化をはかる。今まで以上に、検証する薬液の種類を増やすことが望ましい為、栄養剤や抗がん剤等も含めた薬液の購入にも研究費を使用していきたい。より臨床現場に近づけた場合の抑制効果を学内演習室で検討する為、必要に応じて、輸液ポンプや点滴台を購入する。また、気泡の状態や、操作手順の記録をする為、気泡を写す精度を有するデジタル式の一眼レフカメラや、接写に必要な接写用レンズなどの関連用品、さらに、この画像処理に必要なPCを購入する。全体で予定していた物品の一部を変更することになるが、「次年度使用額」を充填していくことで研究全体の目的を達成できると考える。
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