我々は「輸液ライン中の気泡発生を抑制する各種の方法を樹立し、患者の不安と看護業務の軽減」に寄与しようと考えている。 これまでにボトルを冷蔵保存することにより「輸液ボトルから、一定量の気泡をライン中に発生させる実験方法」を樹立、さらには「気相振とう法」、「超音波法」、「電子レンジ法」により、気泡発生をほぼ完全に抑制できることを報告した。この結果、「気相振とう法」で抑制処理に必要な最短の時間は35分間であったのに対し、「電子レンジ法」では、1~2分程度であることを明らかにした。 平成24年度からは、「機器による加温等を施さない、ボトルの温度管理による抑制法(以下、温度管理法)」の検討を実施した。この結果、一定時間25℃で保存したのち、簡単なハンドシェイキング処理を行うことで、気泡を抑制する傾向が認められた。方法論の普及を考えた場合、特殊な機器を使わないこの方法が最も有力であると考え、平成25年度には、詳細な検討を行った。この結果、臨床現場で気泡が発生しやすいと考えられる状態のボトルを再現し、この状態のボトルを摂氏25度の室温に12時間放置するか、3時間以上放置後ハンドシェイキング処理を加えることで、抑制効果が得られた。また、実際の輸液ポンプを用いた場合、気泡検出アラームの作動も「温度管理法」とハンドシェイキング処理を適切に適用することで、ほとんど作動することはなかった。したがって本研究の1つの結論として、常温保存できる輸液ボトルでは、「温度管理法」の適切な運用により、輸液ライン中の気泡発生を抑制できるとの結論に至った。
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