研究課題/領域番号 |
23593179
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
江上 千代美 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (50541778)
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研究分担者 |
福田 恭介 福岡県立大学, 人間社会学部, 教授 (30173347)
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キーワード | 危険認知 |
研究概要 |
本研究では危険認知の向上を目的とした教育の効果を検討するために,看護学生を対象として,看護援助に関する医療安全教育を実施し,その効果を脳の情報処理過程を反映する眼球運動を用いて解明することを目的とした.24年度は療養上の生活援助に潜む危険認知について眼球運動を用いて検討した. 対象者は看護学生4年生であり,掲示にて募集を行った.参加者にはオリエンテーションを実施し,研究の趣旨を説明した後に,同意が得られた8名を研究の対象者とした.本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得て行った.参加者は医療安全教育に関するセミナー(概論90分1回,生活環境90分1回,移乗移動90分2回)を行った.参加者はセミナー受講前1週と受講2週間後に医療安全教育の内容に関する危険要素を含んだ療養上の世話写真21枚と医療安全教育の内容に含まれていなかった危険な要素を含んだ診療補助介助に関する写真11枚を見せ,その時の眼球運動を測定した.眼球運動は危険個所を注視してから危険報告ボタン押し(以下,危険認知)が行われたものを解析対象とし,写真呈示から危険個所を注視するまでの時間,危険個所の注視時間および危険個所を注視してから危険報告ボタン押しまでの時間を解析した. その結果,療養上の世話に関する危険認知において,医療安全教育後は医療安全教育前と比較し,写真呈示から危険個所を注視するまでの時間が短縮し,危険認知数が有意に増え,危険個所注視時間もしくは危険個所を注視してから危険報告ボタン押しまでの時間が有意に短縮した.その一方,医療安全教育の内容になかった診療の補助介助に関する写真を見ているときの危険認知および時間に変化は認められなかった.これらより,医療安全教育によって,危険個所を優先的に注視し,危険が認知でき,その時間も短縮されることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度は療養上の生活援助に関する医療安全教育を実施し,その受講前後における療養上の生活援助に関する危険認知について眼球運動を用いて計測し,その効果を検討することであった.医療安全教育セミナーは終了し,受講者の眼球運動の測定も終了している.現在,看護学生の受講前後と看護師のデータを比較し,分析が終了している.しかし,論文については,現在,投稿準備中であるために,やや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
25年度も引き続き,危険認知の向上を目的とした教育の効果を検討するために,看護援助に関する医療安全教育を実施し,その効果を脳の情報処理過程を反映する眼球運動を用いて解明することを目的とする.25年度は診療の補助介助に潜む危険について医療安全教育セミナーを開催し,その効果について眼球運動を用いて計測する.研究計画を次に示す. 1.看護学生を対象に医療安全教育セミナーの参加者を募集する(5月).2.医療安全教育セミナー参加の意志が確認された対象者にオリエンテーションを実施し,研究の趣旨を説明した後に,同意が得られた人を研究の対象者とする(5月).3.医療安全教育セミナーを専門講師に依頼し(4月),医療安全教育の内容検討を行う(4月と5月).4.医療安全教育の効果を評価するために用いる写真作成を行う(5月).5.医療安全教育セミナーを開催する(6月).6.受講前後の看護学生の眼球運動を測定・解析する(受講前5月,受講後7月).なお,測定・解析は同じ方法を用いる(8月以降).7.看護学生の受講前後の眼球運動およびエキスパートナースとの眼球運動の比較を行う(8月以降).8.研究成果をまとめ,発表し,論文にする. これまでの課題として,標準値作成のために10年以上の経験をもつ看護師を対象として,危険要素を含んだ看護場面を見ているときの眼球運動を測定した.しかし,配属場所によって危険認知が異なることが示唆された.そのため,看護師の測定も継続して実施する予定である. 24年度の研究協力の得られた参加者は8名と予定していた人数より少ない結果となった.医療安全教育の実施時期が10月と遅かったために,追加で医療安全教育を実施することができず,研究協力者を増やすことができなかった.25年度はこれらの対策として前期に終了し,参加協力者が少ない場合は後期に再度実施する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度持ち越し金が生じたのは,次の2点である.1.研究協力者30名予定していたが,実際は8名であったこととそれに伴う検査補助および解析にかかる人件費が発生しなかったことである.2.学会参加費用として関東を予定していた学会が県内で実施されたことと学内業務によって日本看護科学学会の参加を取りやめたことである。 測定補助および解析補助者2名謝金(1名6,800円/日×30日)20万4千円,写真作成看護師謝金(8,000×6回×3名)14万4千円,参加協力者30名(1,000×5回×30名×前後2回)30万円,看護師追加(5,000円×20名)10万円,講師(10,000(90分)×5回)5万円,診療補助写真用消耗品代5万円,写真作成および打ち合わせ交通費5万円,学会用ポスター印刷費(特殊紙,大型印刷機用インク)1万円,別冊5万円,翻訳料金10万円,学会発表(日本看護研究8万,日本看護技術学会8万,日本看護科学学会8万)24万円,分担者10万円
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