研究課題/領域番号 |
23593188
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
飯島 佐知子 順天堂大学, 医療看護学部, 教授 (80389890)
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研究分担者 |
豊川 智之 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40345046)
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キーワード | 国際情報交換 / 米国フロリダ州 / 転倒予防 / 電子カルテ / IT / 費用効果分析 / 電子化 |
研究概要 |
【目的】転倒予防対策の実施群と未実施群には転倒リスクに差があることが知られている。対照群を設定した臨床実験は倫理的問題となる場合があり、効果の比較は困難である。それゆえ、本研究では傾向スコアを用いて転倒リスクを調整し個々の対策の効果を評価する。 【方法】IT化した転倒リスクアセスメントツールと連動した標準転倒予防計画を使用している712床の病院で2009年4月~2013年3月末までに在院し、リスクアセスメントを実施した患者のデータを分析対象とした。21項目の転倒リスク要因および15の患者状態像を独立変数、48項目の各転倒予防対策実施の有無を従属変数とするロジスティック回帰分析から傾向スコアを算出し、転倒リスクおよび転倒予防対策の影響を調整し、各転倒予防対策に実施群と未実施群のマッチドサンプリングを行い、オッズ比を算出した。 【結果】アセスメント実施件数は60153件、入院後の転倒件数1046件であり、アセスメント実施件数に対する転倒報告率は1.67‰であった。理解の低下、歩行器使用、排泄介助なしの患者(2265件)が最も転倒割合(5.7%)が高く、ニーズ確認ラウンドと排泄誘導に有意な予防効果があった。全標本では、ニーズ確認ラウンド(オッズ比0.78、95%信頼区間0.63-0.97)下剤・利尿剤服用後の排泄介助(オッズ比0.42、95%信頼区間0.27-0.66)、 薬剤の効果を医師に報告し内容調整 (オッズ比0.51、95%信頼区間0.30-0.87)、夜間はより注意してラウンド(オッズ比 0.59、95%信頼区間0.39-0.90)、家族への説明と付添依頼 (オッズ比0.62、95%信頼区間0.39-0.97 )ハイリスクマーク(オッズ比0.64、95%信頼区間0.44-0.93)の6つであった。 【結論】転倒リスクを調整した後に転倒予防効果のある対策が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本システムを複数病院に導入を依頼するためには、電子カルテに搭載した15の患者状態像や個々の妥当性や45種類の対策の効果を明かにする必要があった。今回、すでに導入されている病棟で得られたデータを用いて、12項目の転倒リスク調整を行うプロペンシティスコア用いた分析をするためには、数万件の標本数が必要であった。適切な標本を得る為に、単年度のデータではなく、2009年4月~2013年3月の4年間のデータの収集を行う必要があった。米国フロリダ州のジェイムズAヘーリー退役軍人病院患者安全研究センターの副所長パトリシア・クイグリー博士を6月に招へいする準備をしたが、本人の体調不良により9月に延期になったことが、全体の進行に影響した。クイグリー博士は9月23日から28日まで滞在され、対象病院看護師等200名に対策の講演を行い、病院の転倒予防の実施状況について視察されて対象病棟看護師に予防方法の指導を実施された。また、研究計画全体についてアドバイスを受けた。その他、新規導入病院での電子カルテへの搭載に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の分析結果をもとに、これまでの15の患者状態像や個々の適切性や45種類の対策を患者状態像や対策内容をよりシンプルにし、実施率の高い予防対策に変更を行う。 分析結果については、クイグリー博士より助言を受ける予定である。 新規導入病院での電子カルテへの搭載に時間を要したが、26年4月より全病棟で導入された。今後、使用してデータを収集する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本システムを複数病院に導入を依頼するためには、電子カルテに搭載した15の患者状態像や個々の妥当性や45種類の対策の効果を明かにする必要があった。今回、すでに導入されている病棟で得られたデータを用いて、12項目の転倒リスク調整を行うプロペンシティスコア用いた分析をするためには、数万件の標本数が必要であった。適切な標本を得る為に、単年度のデータではなく、4年間のデータの収集を行い、分析した。また、新規導入病院での電子カルテへの搭載に時間を要したが、26年4月より全病棟で導入された。 転倒予防物品の購入に80万円、調査作業補助者への謝礼および交通費に20万円を予定している。
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