研究実績の概要 |
本研究では、電子した転倒アセスメントツールと連動した転倒予防対策立案システムを導入した費用と効果を評価した。A病院では導入前の2007年では、転倒インシデント報告率が1000入院日あたり0.82‰ 、転倒アクシシデント報告率が0.11‰であった。導入後の2009年には、インシデント報告率が1.28 ‰ 、アクシシデント報告率が0.11‰であった。2010年は1.32‰、0.10‰、2011年は1.40‰、0.11‰で有意差を認めなかった。 アセスメントと計画立案に要する費用は導入前(2007年)が患者1人あたり560円、で導入後(2009~2011年)が493円で有意に低くかった(p<0.01)。また、転倒による受傷の治療費は、導入前が受傷者1人あたり657,013円に対して、導入後が280,779円であった(p=0.03)。これは骨折の手術を受ける患者が減ったことによるものであった。 対策実施群と対照群への患者の割り付けは倫理的配慮から困難であっため、個々の予防対策の効果は、傾向スコアを用いて評価した。A病院で2009年4月~2013年3月に入院した61,949件のデータを用いた。転倒リスクを独立変数、各転倒防止ケア実施有無を従属変数とするロジスティック回帰分析から算出した傾向スコアを用いて、転倒防止ケアごとに実施群と未実施群の転倒リスクの同じ患者のマッチドサンプリングを行い、オッズ比を算出した。その結果、下剤・利尿剤の服用後の排泄介助が オッズ比0.4、効果を医師に報告し服薬内容を調整がオッズ比0.6 家族への説明と付添依頼がオッズ比0.6 夜間はより注意してラウンドがオッズ比0.6と転倒予防効果の高い対策が明らかになった。しかし、これらの対策の実施率は8.8%~38.6%と低かった。これらの対策の実施率を高めることで、転倒予防効果を高める可能性が示唆された。
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