研究課題/領域番号 |
23593191
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
松永 佳子 東邦大学, 看護学部, 准教授 (70341245)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 勤務助産師 / 地域の助産師 / 親子支援プログラム / 出産後1か月 / 連携支援モデル |
研究概要 |
家族にとってライフサイクル上、危機的移行期と位置づけられる産後1か月の時期をスムースに過ごせ産後うつ、児童虐待を予防するために、施設助産師と地域助産師が提供する家族支援モデルを試行、その評価を目的とする3年間の研究である。 初年度は、産後1か月に必要な家族支援モデルを明らかにするために2段階を経た。第1段階は提供するサービス項目の抽出である。産後1か月健康診査に来院した母親及び父親20組にインタビュを行い、父親に必要な保健指導内容を抽出した。その結果、妻の妊娠中に(1)子育ての方法、(2)新生児のトラブル、(3)産後の妻の気持ちの変化、(4)妻への接し方を知っておきたいと考えていることが明らかとなった。 第2段階は、連携研究者3名および大田区助産師会の会員(3名)、施設助産師(3名)による研究会議を実施した。その結果、地域助産師会を通して潜在助産師を発掘できる可能性があること、現在地域で新生児家庭訪問をしている助産師が一定程度いること、また施設助産師も地域助産師も、妊娠中からの支援が必要であること、ハイリスクの子育て家族だけでなく、「一般」の子育て家族に対しても「気にかける」システムが不可欠である、さらに、父親を支援するためには、夫婦がそろってプログラムを受けることが必要であるという結論に至った。プログラムは、妊娠中に出産後の妻と新生児の生理について理解し、その上でどのような役割が果たせるかについて話し合う、さらに24時間のスケジュールを立てるという3つの柱でできている。 報告者が20年度~22年度までに実施した研究によって、「気になる」母親について病院と保健センターが連携を取る為の橋渡しをした実績があるが、今回の研究では病院と助産師会有志との連携を図ることで、病院勤務助産師の「コーディネータ」としての役割の幅が広がる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、出産後1か月に必要な家族支援モデルを明らかにすることを目指していた。申請段階(22年11月)で学内の倫理審査を受けていた。交付決定後すぐに、対象施設の倫理審査を受け承認されたために、データ収集が予定通り行えた。特に協力施設は年間2500件の出産があり、初産婦に限定しても期間内に対象をリクルートすることが可能であった。 また、報告者が太田助産師会(大田区)の会員となり総会はもちろんのこと、各種イベントに積極的に参加することで、地域助産師との連携を図ることができた。施設助産師とは、実習等で日常的に関わりをもっており、関係性を構築できていた。その結果、産後1か月までの親子支援モデル(プログラム)について検討する機会を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度までに父親に必要な支援が明らかとなり、妻が妊娠中から提供する夫への支援プログラムについて検討することができた。さらに、それを提供する人材の確保も行えている。したがって、本年度は、「初めて子どもを迎える家族の出産後1か月までの支援プログラム」を実際に提供し、その評価をする。 本プログラムを評価するために実験デザインとする。そのために、必要なサンプルサイズは、検出力にて算出した結果、各群75組で計150組である。実際にプログラムの参加者は、プログラムの提供場所を考慮すると、大田区およびその近郊の区に限定される。2011年の大田区とその近郊の区(品川区、港区)の出生数の合計は10000人程度である。そのうち対象となる初産婦はその約半数、さらに里帰り出産をするものが60~70%存在する。よって、1500~2000組程度が本プログラムの対象となる。つまり150組をリクルートするためには、母集団の約10%の応募を必要とする。そのために、HP、さらに保健センターや病院で配布するためのチラシの作成をして、プログラムに参加してもらえるように地域に広く周知していく。 また、一定の支援ができるために、助産師へのオリエンテーションを実施する。 プログラムに参加してくれる夫婦に対しては、メールあるいはSkypeにより適時支援を行う予定であり、継続したサポートを受けられることを保証する配慮をする。 なお、24年度に繰り越す研究費が生じたのは、24年3月に参加予定の学会が24年5月に開催されたこと(旅費)、インタビュのテープ起こしを申請者が行ったこと(謝金)、助産師(大田助産師会)がボランティアとして研究に協力してくれたこと(人件費)にある。したがって、24年度のプログラム参加者へのサポートのための人件費およびリクルートのためのHP、チラシの作成に研究費を充当する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、「始めて子どもを迎える家族の出産後1か月までの支援プログラム」を実際に提供し、その評価を実施する。 物品費:プログラムに参加する夫婦を妊娠後期から産後1か月までを継続的に支援するために、Skypeによる相談を受け付ける。そのために、Skypeを実施できる末端(iPad等)が複数台必要となる。 旅費:プログラムを提供する/受けるために会場に来るために、助産師および参加夫婦の交通費が必要となる。(助産師は大田区内:延200回(1回600円程度:実費)、参加夫婦は延300回(1回600円程度:実費)また、23年度の成果発表のための旅費として(北海道:連携研究者含め2名分、東京:連携研究者、研究協力者含め5名分)が必要である。 謝金:プログラムを提供する助産師に対しては、1回3000円(延200回)の謝金が必要である。プログラムに参加する夫婦に対しては、プログラムがすべて終了した出産後1か月の段階で「よだれかけ」を謝礼として渡す。モデルを評価するための質問紙の作成にあたっては、専門家(統計学:柳井)に相談をする予定である。 その他:質問紙の印刷代、質問紙の送付回収のための通信費、HP作成料、チラシの作成印刷料が必要となる。
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