研究課題/領域番号 |
23593191
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
松永 佳子 東邦大学, 看護学部, 准教授 (70341245)
|
キーワード | 勤務助産師 / 親子支援プログラム / 役割遂行 / プログラム評価 |
研究概要 |
前年度(23年)の調査と文献レビュから、出産後1か月までを順調に過ごすためには、妊娠中から夫婦にアプローチする必要性を見出した。 そこで、24年度の第1段階では、スノーボール式にリクルートした新生児訪問等を行なっている助産師、病産院の勤務助産師、母性看護学領域で教育をしている助産師とディスカッションを通し、出産後1か月の家族支援モデルとして、施設助産師が提供するための、社会的認知理論を援用した「子どもを迎える夫婦が互いに期待する役割遂行のためのプログラム」を開発した。プログラムの目的は、①出産後の生活リズムをイメージすることで自己効力感を高め、②夫婦が互いに期待する役割を話合うことで結果期待を強化し、③出産後に夫婦が互いに期待する役割を果たす言動がとれることで夫婦関係満足度、出産後の夫婦双方のQOLが維持できることである。したがって、評価指標を夫婦関係満足度、親密な関係における効力感、QOLとした。 第2段階では開発したプログラムを実施した。具体的な介入内容は、①出産後1か月までの24時間の生活リズムをイメージするための【知識提供】、②【夫婦双方の期待する役割の明確化のためのワーク】、③【出産後1か月の24時間のスケジュールの作成】、④居住区の産後1か月までに行われる行政サービスに関する情報提供で構成される。なお、「出産はゴールではなくはじまりです」というメッセージから始まる①~③の内容を母子手帳サイズの蛇腹折り4ページのリーフレット、④については、A4サイズを3つ折りにしたパンフレットを作成した。 77組を対象にプログラムを実施した。その結果、妊娠期では、出産後の育児や家事に対する妊婦の期待、パートナーのやる気は、プログラムの実施前後で有意な変化はなかった。いずれも、夫のやる気よりも妻の期待のほうが低かった。現在、出産後1か月の評価のためのデータ収集をしている段階である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は、前年度に検討した【親子支援プログラム=「子どもを迎える夫婦が互いに期待する役割遂行のためのプログラム」】を実施し、評価することを目指していた。 実際に、24年度は、23年度に関係を構築していた施設において、プログラムを実施することができた。対象のリクルートは、原則として申請者が行い、プログラムは施設助産師あるいは申請者が行った。プログラムは100組を超える夫婦に実施したが、評価のための質問紙の有効回答率がやや低い現状がある。最終的には、検出力で算出した65組を上回る70組から有効回答を得ることができた。 また、プログラムの開発過程の一部をタイで開催された学会で発表した。日本での出産後のサポート・システムを紹介する機会となり、同時に諸外国(東南アジア、アメリカ)の産後のサポート・システムについてヒアリングする機会となった。
|
今後の研究の推進方策 |
25年度は、最終年であり、24年度に開発したプログラムの評価として、プログラムそのものおよび経済評価を産後1か月の両親300組程度、および助産師100名程度を対象に郵送法およびWEBによる質問紙調査を実施する。 プログラムそのものの評価は、仮想評価法にてプログラムを受けることでの社会的リスク(産後うつ、虐待など)がどのくらい回避できそうか、また「次子の希望」に繋がりそうかを問う質問紙調査を実施する。 経済評価では、本研究の特徴である、行政によるサービスには直接かかわらず、出産施設が提供できるサービスについて検討していることを考慮した分析を行う。したがって、経済評価は、PSM: (Price Sensitivity Measurement)を実施し、その後、余剰分析を試みることで「継続」的にサービスを提供するシステムの社会的便益を明らかにする。「余剰分析」にあたっては、安川文朗氏のアドバイスを受ける。 WEB調査にあたっては、対象の確保が可能な方法を検討する必要がある。したがって、WEB調査の方法については、専門家のコンサルテーションを受けることとする。 以上の調査をふまえ、プログラムの開発プロセス、およびプログラム評価の結果を日本助産学会、日本母子看護学会、日本母性衛生学会にて発表する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
25年度は、最終年であり、24年度に開発したプログラムの評価を実施する。 物品費:本年度は、昨年度収集したデータの共分散構造分析を実施するための統計ソフトが必要となる。 旅費:質問紙の作成のため研究会議に参加してもらうための旅費(東京近郊から東邦大学:@2000×5名×3回程度)また、最終年であり、これまでの研究成果を発表するための旅費(5月:金沢、10月:大宮、12月:大阪)として、申請者および連携研究者1名分が必要となる。 謝金:経済評価をするための質問紙の作成、および分析にあたっては、専門家(安川文郎先生)に相談する予定である。広くデータを収集するためにWEB調査を実施する予定である。また、データの入力を業者に依頼する。 その他:質問紙の印刷代、質問紙の送付回収のための通信費、HPへの掲載のためのHPの作成料が必要となる。
|