研究課題/領域番号 |
23593191
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
松永 佳子 東邦大学, 看護学部, 准教授 (70341245)
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キーワード | 役割調整プログラム / 夫婦 / 産後1か月 / 生活の予測 / 保健指導 / 経済評価 |
研究概要 |
24年度に、妊娠中に産後の生活を予測し夫婦で役割調整を図ることで、妻が産後に必要なサポートが得られ、結果として夫婦関係を維持すること目的とした「役割調整プログラム」開発した。 そこで、25年度は、WEB調査にて1000名の産後1年以内の第1子を育てる母親を対象に評価を実施した。評価は実際に産後の生活を予測できると思うか、産後の役割調整ができるか、具体的には夫からのサポートが受けやすくなるか、夫とのコミュニケーションが良くなるか等で行った。 その結果、「母親の生理」に関する<知識提供>が580名、新生児の生理に関する<知識提供>が176名、夫婦が期待する役割調整をするための<話し合い>が100名の順に産後の生活に役立つという評価であった。プログラムの効果として最も得点が高かったのは、「お互いが相手の考えていることを理解するきっかけとなると思う」が7.8点、次いで「前向きに子育てを捉えることができると思う」が7.5点、「出産後の生活リズムがイメージできると思う」が7.1点であった。一方、「出産後は、妊娠中にイメージしていた通りの生活が送れると思う」が4.9点であった。 「役割調整プログラム」のかなで有用なものは<知識提供>であり、その結果、産後の生活をイメージすることができる、夫婦間の理解を促進することに効果があるという評価であった。子どもをもつと夫婦関係が変化するといわれているが、妊娠中に産後の生理について<知識提供>することで産後の生活について話し合うきっかけとなり、お互いの考えていることの理解につながるものと考える。 以上のことから、「役割調整プログラム」は、その目的が達成できたと考える。また、本研究から現状では妊娠中に産後の生理や生活についての知識提供が十分に行われていないことが示唆された。現在、経済評価のための分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
25年度はプログラム評価を母親およびケア提供者である助産師に実施してもらう予定であった。母親についてはWEB調査にて実施することができた。しかし、ケア提供者である助産師に対するWEB調査は困難であった。そのため、スノーボール式に助産師をリクルートして、調査を実施しているところである。また、本プログラムを広く周知するために、ホームページを立ち上げる予定であったが、その立ち上げのためのコンテンツの作成に時間を要している。 一方、ホームページのコンテンツを思考する過程において、新たな課題を見出すことができた。本プログラムは、妊娠中に産後の生活を予測し、夫婦で役割調整を図ることで、妻が産後に必要なサポートが得られ、結果として夫婦関係を維持することを目的としている。しかし、プログラムでは、夫に対して具体的な支援方法については十分に説明する内容を含んでいない。したがって、具体的な支援方法については、施設あるいは行政等で提供している「父親支援」プログラムを活用してもらう必要がある。ところが、行政等で提供しているプログラムの検索は必ずしも容易ではないことがわかった。したがって、新たな課題として父親支援プログラムを容易に検索できるような情報提供が必要であり、その課題を解決するための取り組みを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
母親を対象としたWEB調査結果から「役割調整プログラム」の中で、とくに産後の母子の生理および授乳についての知識提供をすることの有効性が示された。同時に妊娠中に母子の産後の生理や授乳を中心とした生活になることについての知識提供が十分に行われていないことが示唆された。 以上のことから、通常、助産師が実施している妊娠期の保健指導において、出産を見据えた保健指導のみならず、産後の母子の生理についても知識提供していくことの重要性が導けた。そこで、妊娠期に実施する保健指導に関する助産師の意識を明らかにすることが重要であると考える。 今後、引続きケア提供者に「役割調整プログラム」の評価してもらうこと、さらに妊娠期に提供するプログラムとして実施するための助産師自身および施設での課題を明らかにして、プログラムを広く活用してもらう働きかけが必要である。 そのために、学会発表を引続き行うとともに、開発したプログラムのパンフレットを配布する、関心をもった施設へ実際に説明に出向くなどの草の根の活動を行っていきたい。 また、ホームページのコンテンツを思考する過程で明らかとなった、行政で提供している「父親支援」プログラムが容易に検索可能となる情報提供ができるホームページ作成を試みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は開発したプログラムの評価をWEB調査にて母親と助産師に実施する予定であった。母親へのWEB調査は終了したが、助産師に対するWEB調査は困難であることがわかった。その後スノーボール式にデータ収集を試みているが、経済評価が可能となる100名には達していない。また、プログラムを広く周知するために国際学会にて発表する予定にしていたが、その発表が2014年6月である。 さらに、ホームページのコンテンツを作成する過程で新たな課題として、行政等が提供している父親支援プログラムの情報提供をするための方策を検討する必要性が導け、その課題を解決するための取り組みを行ったためである。 助産師に対し「役割調整プログラム」の評価のために質問紙調査を実施する。したがって質問紙調査のための通信費(60名分)、また「役割調整プログラム」を実施することによる経済的分析(余剰分析)を行うにあたり、医療経済学の専門家から示唆を得るための謝金、父親支援プログラムを容易に検索できるようにコンテンツを作成するための謝金、「役割調整プログラム」の母親に対する効果について国際学会で発表する旅費として使用する予定である。
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