24年度は、妊娠中に産後の生活を予測し妻が夫からサポートを得るための調整を夫婦で図ることで、夫婦関係を維持すること目的とした「役割調整プログラム」を開発した。25年度は、WEB調査にて1000名の産後1年以内の第1子を育てる母親を対象に評価を実施した。その結果、「役割調整プログラム」のかなで有用なものは<知識提供>であり、産後の生活をイメージすることはできる、夫婦間の理解を促進することに効果があるという評価であった。子どもをもつと夫婦関係が変化するといわれているが、妊娠中に産後の生理について<知識提供>することで産後の生活について話し合うきっかけとなり、お互いの考えていることの理解につながるものと考える。一方、現状では妊娠中に産後の生理や生活についての知識提供が十分に行われていないことが示唆された。 26年度は、Contingent Valuation Method(CVM;仮想評価法)にて「役割調整プログラム」の経済評価を行った。その結果、「役割調整プログラム」に対して支払っても良い金額は2732円となった。特に、「お互いが相手の考えていることを理解するきっかけとなると思う」、「前向きに子育てを捉えることができると思う」という項目に対しての効果が高く、夫婦関係の維持、児童虐待予防につながる可能性が示唆された。しかし、実際の産後の生活が妊娠中にイメージしていた通りであったという項目については評価が低かった。産後1か月は専門家からの支援の空白期間となっているため、イメージ通りの生活を送れるためにも、産後ケアサービスの充実が不可欠である。一方、アメリカでの産後ケアサービスに関する調査から、出産後の専門家以外のサポートの充実が出生意欲につながる可能性が示された。施設助産師の役割として長期的な支援につながるサービスと連携していくことが重要であると考える。
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