平成25年度は平成24年度に引き続いて静脈注射用の腕モデルと拍動血流ポンプを模擬血管(シリコンチューブ等)で接続した簡易循環モデルを用いて、拍出量、拍動数および血管モデルを変化させた場合の波形と本学および近隣のデイケアセンターにおける各年代(20-70歳代)のK音波形の比較を行った。比較は速度波形、加速度波形および周波数スペクトルの3つを実施した。 最初に速度波形と加速度波形からは K音波形は年齢を重ねることにより次第に変化していくことが判明した。特に年齢を重ねるにつれて波形後部が緩やかに振動する傾向が観測された。この原因は血管の粘弾性が失われていくことによるものと推測される。簡易循環モデルでは波形前半部では若年者同様に鋭い変化と波形後部の盛り上がりの両方が組み合わさった波形が観測された。次に周波数解析結果からは、人体から取得したK音には年代によらず一様に約2Hz付近にマイナスピークが存在していることが判明した。しかしながら、簡易循環モデルにはそれ以外にも複数のマイナスピークが存在しており、拍動血流ポンプ等の動作音や模擬血管の結合部を通過するも何らかの通過音も同時に取得してしまっていることが判明した。 以上のように簡易循環モデルでは、若年者と高齢者の波形の両方の特徴をあわせ持つ波形が取得されて、特定の年代のコロトコフ音波形を再現することはできていないことが判明した。この原因はシリコンチューブ等で接続した模擬血管の構成や拍動血流ポンプ自体に依るものと思われる。一方で、各年代のコロトコフ音波形からは各年代毎の緩やかな変化が観測されており、健康指標値として用いることができる可能性が高いことが明らかになった。 なお、近隣のデイケアセンターにおける高齢者のK音の波形取得はほぼ3ヶ月おきに継続して行っており、今後も年代毎の波形変化の状況の観察も行っていく予定である。
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