研究課題/領域番号 |
23593195
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
小平 朋江 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 准教授 (50259298)
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研究分担者 |
伊藤 武彦 和光大学, 現代人間学部, 教授 (60176344)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 精神看護 / 看護教育 / 統合失調症 / 闘病記 / ナラティブ / 教材 / テキストマイニング / 伝記分析 |
研究概要 |
平成23年度は初年度であり、統合失調症についての、(1)闘病記の収集、(2)データの電子化とコーパスの作成、(3)テキストマイニングによる量的分析、(4)原文参照によるテーマ(主題)分析、(5)伝記分析による質的分析、(6)看護学・心理学関連の国内外の学会発表を研究実施計画の課題として掲げた。これら6つの課題のうち、(1)については、217冊の文献を検索しリスト化し、年代別グラフを作成し、その一部は入手もできた。その結果を現在、「統合失調症の闘病記のリスト:ナラティブ教材の可能性を展望する」というタイトルで、心理学系の雑誌に投稿中であり、結果待ちの段階である。本年度は、闘病記を検索・収集していく経過において、リストやグラフの作成により可視化できた点に意義があり、精神医療の歴史や変遷と出版年との関連の検討を試みることも可能となったと言える。このような闘病記には統合失調症の体験が豊かに物語られており、闘病記の書き手による当事者活動との関連などについても検討することができた。(2)については部分的に行っており、来年度に継続予定である。現在の所、(3)(4)(5)(6)については、来年度への継続課題である。217冊もの闘病記が検索できたこともあり、今後、本研究の目的に合致するような分析の対象となる闘病記を選択する作業も進行中である。 また、すでに実際に精神看護学の講義の中で教材としての活用を試みた闘病記もあり、その効果は、学生からの反応や評価により確認しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに9に述べたように、初年度は、(1)闘病記の収集、(2)データの電子化とコーパスの作成、の課題に重点をおいているので、おおむね順調に研究が進行している。 投稿中で結果待ちの論文、「統合失調症の闘病記のリスト:ナラティブ教材の可能性を展望する」にも報告した通り、ウェブサイトや単行本や論文など、複数のリソースを手がかりとして、217冊という統合失調症の闘病記が検索された。この冊数からもその規模は予想以上に豊かであると言える。すでに入手も終了した闘病記もあり、この217冊という規模の中から、本研究の目的に合致するような分析の対象となる闘病記を選択する作業が可能となったことからも、教材としても十分な検討ができると言える。 そして、闘病記を検索・収集していく経過において、リストやグラフの作成により可視化できたことから、精神医療の歴史や変遷などの時代背景と出版年との関連の検討を試みることが可能になったことは、重要な意義があると考えている。このような闘病記には、その時代の精神医療を背景としながら統合失調症の体験が豊かに物語られており、闘病記の書き手による当事者活動との関連や当事者の思いを知るための手がかりとなる資料としても意義は大きいものであると考える。 実際に講義の中で教材として活用を試みた闘病記に関しては、学生からの反応や評価も好評であり、このことは次年度以降の研究の推進をさらにスムーズにさせるための要因にもなるものであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに9と11において述べたように、平成23年度の研究実施計画である(1)闘病記の収集、(2)データの電子化とコーパスの作成、(3)テキストマイニングによる量的分析、(4)原文参照によるテーマ(主題)分析、(5)伝記分析による質的分析、(6)看護学・心理学関連の国内外の学会発表、にも継続して取り組むことで、2年目の平成24年度の課題も、より進展される。 そうすることで、今年度の研究実施計画である(1)ミックス法による量的研究と質的研究の比較と統合、(2)看護学・心理学関連の国内外の投稿論文作成と学会発表、(3)看護教育のための教材集の作成に向けての準備、を今後予定通りに推進していきたい。 具体的には、(1)は、入手可能な闘病記は入手しPDFなどにより電子ファイル化して検索可能にする作業をしながら、テキストマイニング分析でミックス法による比較と統合を行う。 (2)は、日本心理学会では「統合失調症の闘病記のリスト:ナラティブ教材の可能性を展望する」というテーマで、日本看護科学学会では「ナラティブ教材を用いた精神看護学授業における統合失調症のイメージについてのテキストマイニング」というテーマで発表を予定している。 (3)は、これまでに実際に講義の中で教材として活用を試みた闘病記で、学生の反応も好評なものを選択して教材集作成のイメージを具体的にしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文作成のための図書費や複写費が必要である。平成24年度もテキスト入力、データの電子化とコーパス作成、図表の作成のために人件費・謝金が必要となる。 研究者2名でテキストマイニングを効率よく作業し、その作業内容の確認と打ち合わせのためには高性能のCPU(作業能力)を持ったパソコンが必要である。 研究室所蔵のテキストマイニング保守契約のための費用が必要となる。 伝記分析の個別分析やテキストマイニングによる分析、中間的な成果の報告を看護学・心理学関係の国内外の学会で発表するにあたり、翻訳委託費、学会発表旅費が必要となる。 闘病記をミックス法による量的研究と質的研究の比較と統合しつつ、教材集作成に向けての準備にあたり、研究者2名の研究打ち合わせのために旅費、入力したデータを印刷して確認するためのプリンタインクなど文房具の費用も計上する。
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