【具体的内容】看護師の災害への備えを高める体系的な教育プログラムの開発を進めた。開発に当たり、「経験」を重視する看護基礎教育の特性をもとに、災害看護実践行動の語りの蓄積を活かした。備えの教育において、非日常の災害を予め経験することが難しいために、教育内容が知識の網羅的提示にならないように工夫して、他者の災害経験を学習者の物語として学べるようにした。教育プログラムは、災害看護実践行動をもとに、看護者の一連の行動の中から特定状況に焦点化して再構成したもの、時間の経過とともに看護者が直面する固有の医療ニーズや課題、困難を時系列に再構成したもので構成した。学習者はプログラムにより観察学習と発見学習を行う。学生及び災害拠点病院の看護師を対象に試行し、評価を実施した。また、併せて作成した尺度の信頼性・妥当性の検討を進めた。今後、教育プログラムの充実を図りながら、学習者の学びを評価する尺度に発展させる予定である。 【意義】先行研究である「災害看護コンピテンシーの抽出と構造化」の成果を生かし、看護者の災害看護実践能力の形成・強化を図る教育プログラムの開発を目的としている。質の高い災害看護の提供を実現するには、看護者の能力に相応しい効果的な教育プログラムの開発、学習成果を評価する尺度の開発が必要である。看護基礎教育から現任教育で適応できる教育方法と評価尺度を開発し、看護師が災害時に的確に対応できる力を身につけさせることにある。 【重要性】南海トラフ巨大地震など巨大災害が想定される中で、災害の多様性・個別性に的確に対応する基礎的能力を養うことが喫緊の課題である。災害は非日常的で、実際の災害の中で看護者を動機づけ理解を深めることが困難である。災害現場で高い実践能力を発揮した看護者の看護実践、困難な状況や直面した課題等の経験を生かした教育プログラムを提示することで、看護者の災害の備えの強化につながる。
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