研究課題/領域番号 |
23593213
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松本 智晴 大阪府立大学, 看護学部, 助教 (80540781)
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研究分担者 |
宇都 由美子 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (50223582)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 看護ケア量 / DPC |
研究概要 |
平成23年度は、鹿児島大学医歯学総合研究科疫学研究等倫理委員会で本研究課題についての倫理審査を受け、承認を得た。鹿児島大学医学部・歯学部附属病院において平成21年4月1日~平成22年3月31日の期間に一入退院歴を持ち、上6ケタDPCコードが040040(肺の悪性腫瘍)の患者469名、050050(狭心症、慢性虚血性心疾患)183名、050030(心筋梗塞)12名、060020(胃の悪性腫瘍)141名、060035(大腸の悪性腫瘍)62名、060050(肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む))419名、計1,286名のデータを収集した。次に、DPCコード040040(肺の悪性腫瘍)、060020(胃の悪性腫瘍)、060035(大腸の悪性腫瘍)の患者、672名の日本版Nursing Minimum Data Set(以下、NMDS)実装のためのデータベースを構築した。 また、平成23年度は日本版NMDS開発の基盤となる平成22年度の研究成果について分析を進めた。先行研究では、看護ケア量に影響を及ぼす要因は主に全身麻酔による手術、患者のADL、年齢、入院目的等であり、DPCにより差異を認めた。さらに本研究では、決定木という統計手法を用い、明らかになった要因の看護ケア量に対する影響の強さを解析した。その結果、同一DPCにおいて看護ケア量に影響を与える要因、例えば手術や患者のADLなど、2~3項目の患者特性を組み合わせることにより患者をグループ化できることがわかった。このことは、DPCごと患者の特性に応じた標準的な看護ケア量を決定でき、患者に提供する看護ケアの均てん化に資することができる。高齢社会の進展に伴い、医療施設の機能分化による急性期病院の平均在院日数が短縮している中、本研究で得られた成果は看護情報の標準化の発展及び看護の質の向上に寄与できるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、DPCにおける患者要因を加味した日本版Nursing Minimum Data Set(以下、NMDS)を開発・実装し、その妥当性を検証することを目的として研究活動を行った。日本版NMDSの開発においては、本研究の基盤となる平成22年度の研究成果について、さらに決定木を用いた分析を進め、看護ケア量に対する影響の強さについて順位を付けて解析した。その結果、DPCコード040040(肺の悪性腫瘍)、060020(胃の悪性腫瘍)、060035(大腸の悪性腫瘍)の3コードについて、DPCごとに看護ケア量に影響を及ぼす要因をより明確にすることができた。今後も、DPCを分類基準として看護ケア量に差異をもたらす要因を明らかにし、体系化していくことで、患者要因を加味した日本版NMDSの開発を進める。また、平成23年度は鹿児島大学医歯学総合研究科疫学研究等倫理委員会で承認を受け、データを収集した。現在、日本版NMDSを実装し、妥当性を検証するためのデータベース構築までは終了したが、検証はこれから行うため上記評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、日本版NMDSの実効性と応用範囲について検討を加え、日本における看護情報の標準化の進展に資することを目的として研究活動を行う。平成23年度は、DPCを分類基準とした看護ケア量に差異をもたらす要因の解析方法について明確にしたため、平成24年度も残りのDPCコード050050(狭心症、慢性虚血性心疾患)、050030(心筋梗塞)、060050(肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む))について解析し、体系化する。また、構築したデータベースで日本版NMDSを実装し、妥当性の検証を行う。また、日本版NMDSの実効性と応用範囲の検討については、医療情報のシステム化が進んでいる他の医療機関において疫学研究倫理委員会による審査を受け、研究協力を得る。他の医療機関においても同様に、日本版NMDS実装のためのデータベースを構築し、実装することにより日本版NMDSの実効性と応用範囲を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、日本版NMDS実装のためのデータベースの構築に時間を要し、妥当性の検証が次年度になったため、平成23年度研究費を一部執行できなかった。そのため、平成24年度は、日本版NMDSの実装と妥当性の検証、運用評価のために平成23年度研究費の未使用額を使用する。 平成24年度の研究費は、他の医療機関に研究協力を依頼し、日本版NMDSの実効性を検証していくために使用する。さらに、2012年6月にカナダで開催される11th International Congress on Nursing Informaticsにおいて本研究の成果について報告し、海外の研究者との意見交換を行うとともに、NMDSに関する最新の情報や知見を得るために研究費を使用する。
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