研究課題/領域番号 |
23593226
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
上條 優子 信州大学, 医学部, 講師 (40530431)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | がん看護 / アウトカムマネジメント / 症状管理 |
研究概要 |
がん看護におけるアウトカムマネジメントの研究として、平成23年度は、抗がん剤治療で入院経験のあるがん患者を対象に、看護に左右される患者アウトカムについて検討した。方法は、まず、2008年4月から2010年9月の間に入院した患者で、抗がん剤治療を受けた肺の悪性腫瘍(DPC番号:040040xx9904xx)284ケース、子宮の悪性腫瘍(DPC番号:120020xx99x4)473ケース、肝臓の悪性腫瘍(DPC番号:060050xx99x)226ケースのDPCデータを分析した。次にがん看護の認定看護師5名より、看護に左右される患者アウトカムについて米国がん看護学会の行った調査をベースとして聞き取り調査を行った。その後、外来化学療法を行っている患者182名を対象にがん治療や日常生活において困っていることについて質問紙調査を行った。 結果は、まず、DPC調査では、肺の悪性腫瘍は平均年齢65.9±11.0歳、男性72.9%、平均在院日数は29.6±21.7日(中央値22.5日)であった。子宮の悪性腫瘍では、平均年齢64.2±12.7歳、平均在院日数は5.2±5.6日(中央値3日)であった。肝臓の悪性腫瘍では、平均年齢69.2±10.4歳、平均在院日数は29.6±21.7日(中央値22.5日)であった。同じDPC番号ではあるが、抗がん剤の種類も患者の状態等により異なり、1つのDPCの中に数十種類が使用されていて入院費は高額な抗がん剤使用により高くなる傾向にあった。また、抗がん剤の副作用の発症もさまざまであった。次に、がん看護認定看護師に、患者に良い影響を及ぼしているケアについて調査したところ、痛みや嘔気の管理など症状マネジメントには看護介入が重要であるという認識であった。患者への質問紙調査では、倦怠感(62.6%)、痛み(48.4%)が困っていることであった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん看護におけるアウトカムマネジメントの研究として、平成23年度は、この研究の目的の1である、抗がん剤治療で入院経験のあるがん患者を対象に、看護に左右される患者アウトカムについて検討した。DPCデータの分析により、がん患者の実態を大まかにつかんだ。但し、がん治療というのはかなり複雑で、同じ病気で同じDPCであるが、数十種類の抗がん剤が使用されていて、抗がん剤の種類や病期、また、患者特性によっても副作用の出現が異なってくるため、DPCではどんな看護ケアが大切なのかはひとくくりにまとめられないことも判明した。 がん看護認定看護師への聞き取り調査や、がん患者への質問紙調査では、がん患者に必要でかつ看護介入により、良い結果をもたらすであろうことは、症状マネジメントであることが分かった。その中でも特に痛みの管理については看護介入が良い影響を及ぼしているという認識であった。これは先行研究とも一致していた。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、年度をまたぐ形で、がん看護の中でも、がん患者の痛みのケアに焦点をあて、がん看護のアウトカムマネジメントを検討している。具体的には昨年度の患者調査で痛みで困っていると回答した患者を対象に、痛みの原因、治療、行われたケアとその効果について前向きに調査している。この調査を継続することで目的2である、看護ケアと患者アウトカムの関連を探ることにつながると考える。平成24年度は、目的2である、明らかになった看護ケアと患者アウトカムについての関連を探ることを行う。つまり、平成23年度の結果を踏まえ、がん看護の中でも、がん患者の痛みのケアに焦点をあて、がん看護のアウトカムマネジメントを検討していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
この研究は3年継続で行う研究で、現在年度をまたいで、看護ケアの中でも痛み緩和ケアに焦点を当て、昨年度の調査で痛みで困っていると回答した患者を対象に、痛みの原因、治療、行われたケアとその効果について前向きな調査を行っている。 研究費の使用計画としては、患者調査のための備品・消耗品として、本や文房具、プリンターインク代等が必要である。また、研究の打ち合わせとして引き続き東京大学医学系研究科健康科学看護学専攻看護管理学分野の山本則子教授と連携するため旅費が必要である。そして、痛み緩和ケアのアウトカムに関する最新情報を得るため米国がん看護学会に参加する。そのための旅費も必要となる。また、文献整理やデータ入力のためのアルバイトも雇う予定である。平成23年度の研究費を10万円ほど残したが、これは、当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため、次年度使用額が生じた。
|