本研究は、造血器がん患者が造血幹細胞移植を受け、その療養体験の経過の中で支えになったサポートや自らの療養体験をどのように意味づけしているかを明らかにすることを目的にしている。 本研究は、インタビュー調査によって患者自らの語りからその主観的体験を質的帰納的に分析することを目指した。研究実施最終年度である平成25年度は、引き続き研究参加者の承諾を得て、インタビュー調査を進めた。得られたデーターの個別分析から全体分析に着手した。 その結果、造血器がんと診断を受けた患者は、突然の発症に驚き、衝撃を受けていた。そのなかで、発症から移植治療中において支えと感じた事柄として、【治療への期待】、【安心して治療を受けられる環境】、【周囲の人の励まし】、【ドナーへの感謝】、【家族の存在】、【治癒のイメージを持つ】、【同病者の姿】の7つのカテゴリーと、21のサブカテゴリーが見出された。これらのことから、造血幹細胞移植を受ける患者への看護実践として、突然の発症に衝撃を受けている患者の思いをくみ取り、移植治療を乗り越えていけるよう信頼関係を築き、情緒的支援を行う必要性が示唆された。移植治療中は、限られた環境での生活となる。患者が発症前の日常に近いと感じられる環境調整と細やかな配慮が必要となる。患者を支える家族のケアを行い、家族がその力を発揮できるように支援していく必要性が示唆された。また、移植後患者への看護実践として、移植後の患者は、発症前の元の生活に必ずしも戻れることが保障されているわけではない。そのため、患者の抱える再発への不安、生活上の問題等への支援をおこないながら、信頼関係の中で思いを表出できるような継続的なかかわりが必要となることが明らかとなった。
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