本年度は、がん診療連携拠点病院のエキスパートナース(12名)を対象にし、これまでの面接から得られたデータを、再度見直し、個別分析をもとにカテゴリー化を行い、全体分析を行った。 しかし、これまでの報告でも述べてきたように、がん患者を対象に面接したデータでは、患者は外来で医師から治療(手術療法、抗がん治療など)についてのインフォームド・コンセントをきちんと受けて治療目的で入院してきているため、ほぼすべての患者が医師を頼りにしており、ナースに支えられて治療を行っているという実感に乏しいことが分かった。また、インタビューを行ったナースから得られたデータにおいても、本研究で明らかにしたいと考えるホリスティック概念や、患者の全体性を捉えた看護やケアを意識的に行えていない状況が明らかとなった。そのため、本研究が目指すホリスティックなアプローチに関するリッチなデータ収集に至らなかった。そこで、「治療期にあるがん患者へのホリスティック・アプローチを基盤とするケアモデル」を完成することはできないと考え、本研究においては、ナースから得られたデータをもとに「治療期にあるがん患者へのホリスティック・アプローチを基盤とするケア」についてまとめることとした。その結果、がん治療期にある患者にかかわる臨床経験5年以上を有する看護師の「ホリスティック・アプローチを基盤とするケア」は、「関係性を大切にし関わるケア」「苦痛症状を確実に緩和するためのケア」「苦悩に向き合い気持ちに寄り添うケア」「内的世界を推察し関わるケア」「個人としての独自性を尊重したケア」など、8つのカテゴリーから説明できるものとして明らかにすることができた。
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