研究課題/領域番号 |
23593266
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
村岡 宏子 東邦大学, 看護学部, 教授 (60258978)
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研究分担者 |
尾崎 章子 東邦大学, 看護学部, 教授 (30305429)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ALS / 家族介護者 / 神経難病 / 心のバリアフリー / モデル構築 / 心理的ストレス |
研究概要 |
近年、神経難病のケアシステムは整備され、患者ケアのアウトカムは蓄積されてきた。しかし、ALSの家族介護者が介護に没頭し、「介護だけの自己」になれば、自分の食事を味わうことも、外出することにさえ罪悪感をもってしまうこともあるだろう(村岡,2007)。もし、家族介護者のニードが誰からも振り向かれず、患者の病気だけが介護者の記憶に刻印されるとき(Steinglass,1988)、心理的ストレスは双方にとって深刻な問題になりかねないと考える。 今回数例の家族介護者へインタビューを実施した。約10年介護している家族介護者は、1日ないし1週間のスケジュールが組み立てられていた。外部サービスを使わなくても介護の生活リズムは出来上がっており、1週に1回2時間程度のサービスを利用していた。むしろ、外出のためにヘルパーを頼むことには抵抗感があった。また、ヘルパーサービスは、夕方から夜の時間帯に利用していなかった。これには夕方以降の時間帯に家族だけで集うという意味があった。一方、在宅療養を開始してから半年以内の家族介護者では、3時間程度の外出時間でも「気晴らし」にはならなかった。そして、数カ月に一度のレスパイトケアで、解放感に浸れると述べた。家族介護者たちは、最近2カ月外出していないとも語った。このような状況が続くと、家族介護者は、自分の時間がもてないことへ次第にイライラして、不満が募っていき、しまいには「外出先からどこかへ行ってそのまま帰らない」心境に陥ることさえあるとも考えられる。 医療者が提案する介護におけるルチーン化は、患者と家族の療養介護の質を確保できるが、一方で、自由な時間や遊びのない日常から慢性的な疲労を招く危険性を孕んでいる。今後、第三者であるヘルパーを入れて介護を組み立てることの意義とともに、その困難さを継続的に探求する必要性があるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家族介護者数名へのインタビューを実施し、Flickの方法で分析解釈を行った。しかし、促進モデルの概念を抽出するためには、研究参加者数をさらに追加する必要があると考える。また、患者会誌を含む先行研究に関してMeta-narrative mappingが途中になっており、促進モデルの概念抽出作業が急がれる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、ALSの家族介護者における心のバリアフリー化促進モデルの構築を予定している。■前年度のインタビュー調査に追加して、家族介護者へインタビュー調査を実施。■促進モデルの構成要素の抽出。■グループという方法で、セッションを実施。■モデルの評価視点を抽出。具体的な計画は以下の通りである。4-6月:Meta-narrative mappingによって明確化した構造とインタビュー分析結果を統合し、心のバリアフリー化促進モデルの構成要素を抽出する。現象学の専門家から理論的基盤の知識を入手する。6-7月:促進モデルの構成要素へ慢性看護専門看護師から意見をもらい修正を加える。8-9月:家族介護者にグループワークという方法を用いて展開するための方法を検討する。家族介護者数名を対象にして、期間限定で数回のセッションを企画し実施する。10-11月:促進モデルの評価視点を出す。2-3月:セッションに伴う倫理的配慮を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度における研究費の主な使用は、第一にインタビュー調査、第二にグループセッションの実施である。また、モデル構築のために、理論的基盤の専門知識について現象学の専門家および神経難病の専門看護師から情報提供を受ける予定である。具体的な使用について以下に記載する。 1)インタビューのテープ起こし作業。2)理論的基盤の専門知識の情報入手:現象学の専門家から情報を得る(謝礼5回分)。3)現場の情報入手:サブスペシャリティーが神経難病の専門看護師から現場における情報を得る(交通費および謝礼2回分)。4)グループセッションに伴う経費(約5回分の会議費と研究参加者への謝礼)。5)海外での成果発表(Chicago で開催されるALS/MND国際会議への出席)。6)資料作成のための携帯用カラープリンター。
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