研究課題/領域番号 |
23593267
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
山本 佳代子 東京工科大学, 医療保健学部, 助教 (40550497)
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研究分担者 |
奥宮 暁子 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (20152431)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 透析 / 自己決定理論 / 自律的動機づけ / セルフマネジメント |
研究概要 |
【第1段階】透析患者対象調査は、透析クリニック5施設の患者192名に質問紙を配布し、145名から回収し、この145名分で中間分析を行った。概念間相関分析では、自律性支援の認知は、自律的動機づけと(r=0.40,p<0.000)有能感(r=0.38,p<0.000)と有意に相関しており、自律性支援が自己管理に有効な患者の認知を促進していた。GHQ-28が6点以上のうつ傾向者では、自律性支援認知が有意に低く(p=0.036)、ほとんどのQOL項目でも有意に低い結果となった。自律性支援はうつ傾向を介してQOLにも影響を与える可能性が示唆された。動機づけの種類別では、自律的動機づけが高く他律的動機づけが低い群の自己管理は良好で、有意に透析歴が長かったため、透析歴により認知が変化し、自己管理に関する動機づけが変化していく過程が明らかになる可能性がある。原疾患による比較では、糖尿病有り群が他律的動機づけと無動機が有意に(p=0.003)高く、他の疾患との違いが大きい可能性がある。以上のように分析をすすめており、自律的動機づけへの影響要因が明らかになってきている。【第2段階】医療者対象調査のために「患者教育」「看護師患者関係」に関する文献レビューの結果や、協力施設の看護師長への聞き取り調査を行い、患者の自律性支援を行う上での看護師の意識や障壁についての質問項目の構築を行い、配布準備が終了した。各施設で患者対象の調査が終了次第、透析室スタッフへの配布を開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は、当学倫理委員会で承認を受け、協力施設への交渉を開始した。透析クリニックでは6施設で調査の承諾を受け、総合病院では3施設の倫理委員会に申請し、H23年度内にすべて承認を受け、5施設で調査を開始することができた。ただし、計画時よりも協力施設が増えたことと、各施設での倫理審査に時間を要したため、すべての施設に配布が終了できなかった。配布はやや計画より遅れている部分もあるが、より多くの施設からのデータを得ることで、施設間差の比較検討がより充実したと考える。 また、自己決定理論の各概念間の関係に関して、今年度行った最近の文献検討を加えて学会誌に掲載することができ、自律的動機づけが患者のセルフマネジメントを促進する可能性について発表することができた。 第2段階の医療従事者対象研究については準備を行うことができたため、H24年度予定内容をおおむね実施できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
【H24年度】透析患者対象の質問紙配布を終了させ、最終的な分析を行い、患者の自己管理への動機づけに影響する要因についての知見をまとめる。並行して医療従事者対象の質問紙の配布を行い、スタッフ側の「透析患者の自己管理に関する支援」の実態、実施上の障壁を明らかにする。その内容を基に、スタッフの教育プログラムを構築する。また、自律的動機づけの認知の病期による変化を確認するため、10例程度(保存期・維持期含む)インタビュー調査を行う予定である。【H25年度】スタッフ教育プログラムを実施し、その効果を見る。効果判定には、スタッフへ「透析患者の自己管理に関する支援」の実施状況の変化、患者に対する認知の変化を確認するために、2回目の質問し調査を行う。さらに、患者への効果判定のために、数例の患者へ支援した事例検討を行う。【より推進するための工夫】研究協力施設ごとに窓口となるスタッフを選定し、各施設との調整、質問紙配布予告などをスムーズに行えるように工夫する。
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次年度の研究費の使用計画 |
協力施設での倫理審査に時間がかかり、質問紙配布が遅れたため、回収の予定も延長している。データ入力のための人件費を使用しなかったため、研究費の繰り越しが生じた。その分は、次年度に研究データの入力作業を行い、その謝金として使用予定である。次年度の予定された研究費の主な使用計画として、(1)研究協力施設への交通費、(2)研究データ入力作業の謝金、(3)研究対象者(透析室スタッフ)への勉強会開催に伴う資料印刷代と質問冊子返送のための郵便料金、(4)各種学会への参加費、交通費、(5)書籍・文献取り寄せ料などを予定している。
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