研究課題/領域番号 |
23593274
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
坊垣 友美 愛知医科大学, 看護学部, 准教授 (00469545)
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研究分担者 |
白川 卓 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (30171044)
片桐 祥雅 独立行政法人情報通信研究機構, その他部局等, その他 (60462876)
宇佐美 眞 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (00193855)
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キーワード | タッチセラピー / 慢性疼痛 / 脳波 / 後頭部α2リズム / 柚子 / 精油 / 寒冷昇圧試験 / 疼痛制御 |
研究概要 |
アロマタッチセラピーでは心理的鎮静化の誘導が疼痛を緩和する説があるものの、その機序は解明されていない。一方、慢性疼痛患者の低下した視床活動を活性化することで疼痛を緩和する報告があり、疼痛仮説には矛盾がある。そのため本研究では柚子タッチセラピー(YTT)の疼痛緩和機序を視床を含む深部脳活動に着目し、YTTの疼痛緩和の作用機序を神経生理学・神経心理学的に明らかにすることを目的とした。健常な被験者13人に対して、疑似慢性痛はTransient Receptor Potential Ankyrin 1をターゲットにしたC線維を刺激する寒冷昇圧試験(cold pressor task)を適用した。実験は3条件:ベースライン、コントロールとYTT (柚子+セサミオイル)について比較した。疼痛評価はNumeric Rating Scale(NRS)と近赤外線脳血流センサーを併用した。神経生理学評価はEEG計測により視床を含む深部脳活動を反映する後頭部α2リズムパワー(10-13Hz)を定量化した。神経心理学的評価は、STAI form JYZ、Global Scale for Depression、痛みの感情要件は快-不快、 覚醒-眠さ、 興奮-鎮静、痛み関連症状の100mm Visual Analog Scaleを行った。その結果、NRS痛み評価が後頭部α2リズムパワーの緩徐変動成分と強く相関しており、YTTでは高度な深部脳活性領域では減少、低い深部脳活性領域で増加する間、痛み評価は減少するというV型の曲線が認められた。YTTは感情状態とは頓着せず、α2パワーを最適化し、無痛状態を誘導し得ることが分かった。このような深部脳活動ネットワークの習性がモノアミンを含有するシステムのバランスを基礎として説明される可能性があるものの、その機序は将来の研究で明らかにされなければならない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
柚子タッチセラピーの疼痛緩和機序を神経生理・神経心理学的検査から複数のスケールを用いて解明した。またEEG計測による後頭部α2パワーの定量的評価から、柚子タッチセラピーがその最適化を誘導して痛み緩和をし得るという新しい発見をした。従来のアロマタッチセラピーの心理的鎮静化誘導による疼痛緩和説を払拭し、基礎研究としてアロマタッチセラアピーのエビデンスとなる新知見を得たため。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究としてアロマタッチセラピーの疼痛緩和機序について新たな発見にいたった。このような視床を含む深部脳活動ネットワークの習性がモノアミンを含有するシステムのバランスを基礎として説明される可能性があり、その機序は将来の研究で明らかにしていくことが必要である。 また、痛みやそれを要因の一つとする倦怠感についても、調査対象を拡大して、アロマタッチセラピーの全貌を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に柚子の嗅覚投与と柚子タッチセラピーを比較検討して複数の論文発表を行う予定であったが、課題の難易度が高く、柚子タッチセラピーの神経生理・神経心理学的解析に時間を要した。詳細に疼痛緩和機序の解析を行った結果、有効性を早期に発表する必要性がある考えられた柚子タッチセラピーの疼痛緩和機序の論文発表を優先したため、未使用額が生じた。 アロマオイルの嗅覚投与と皮膚へタッチセラピーについて深部脳活動を中心とした疼痛緩和効果を比較検討して論文発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てさせていただきたい。
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