研究課題/領域番号 |
23593277
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
原 頼子 久留米大学, 医学部, 准教授 (60289501)
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研究分担者 |
坪井 康次 東邦大学, 医学部, 教授 (50138989)
ブルーヘルマンス ラウール 東京医科大学, 医学部, 准教授 (50424601)
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キーワード | 2型糖尿病 / エンパワーメント / 自己管理行動 / 家族サポート / 医療者サポート / 患者教育 / 連携システム |
研究概要 |
エンパワーメントは、患者の持つ潜在的な力を引き出し、治療法を自己決定しながらセルフケアに積極的に取り組む能力を引き出す過程で、医療者や患者家族の患者に対する尊厳と共感、コミュニケーション能力などが深く関与している。本研究は、糖尿病患者のエンパワーメントに影響を与える医療者(看護師)、家族の要因を各種調査表を用いて測定し、要因分析を行い、患者にとって効果的な療養支援のあり方を知り、良好なQOLを維持するため教育システムの構築に向け、医療者・家族のサポートのあり方について検討することが目的である。 平成24年度は、平成24年度実施のDiabetes Family Behavior Checklist(Schafer et al.)(以下DFBCとする)を使用した調査の結果を分析し、日本語版DFBCの開発を行った。インスリン治療患者158名、血糖降下薬内服患者169名の対象者において、日本人の2型糖尿病糖尿病患者に対し、DFBC日本語版は、家族のポジティブサポートとネガティブサポートの2つの側面を測定することができ、信頼性(内的整合性)は良好で、再現性にも優れていた。また、外部妥当性は、食事・運動自己管理行動調査票、日本語版Appraisal Diabetes Scale(原、小山ら、2011)(以下ADSとする)、およびHbA1c値を用いて検討を行い、DFBCのポジティブサポートとネガティブサポートのスコアは、糖尿病患者の薬物療法、食事療法、運動療法の自己管理行動の状態を測定していることを確認することができ、エンパワーメントのための家族の要因は測定できると考える。 また、患者エンパワーメントの測定については、Diabetes Empowerment Scale(DES)をAndersonに許可を得て、翻訳・逆翻訳を行い、日本語版の開発に向けて検討を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本語版DFBCの開発過程や、測定した家族のポジティブサポート、ネガティブサポートスコアは2型糖尿病患者の食事・運動自己管理行動、インスリン・経口血糖降下薬療法の測定と関連しており、自己管理状況を測定できる調査票であった。 DFBC及び自己管理行動調査票を使用した調査から、血糖コントロールの良好な患者は家族の積極的なサポートを得ていることを述べた論文が、ジャーナルに掲載された(Diabetes Research and Clinical Practice、99、39-47、2013)。このことは、日本語版DFBCの実用化につながり、患者のエンパワーメント測定のための1つの調査票として有効なものであると評価できると考え、今年度の研究の目的はおおむね達成されていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
DFBCは、糖尿病患者の薬物療法、食事療法、運動療法の自己管理行動の状態を測定していることを確認することができたが、糖尿病患者の治療に対する精神心理的側面を評価することには限界があることも示唆された。この結果から、家族の消極的なサポートや批判的評価が患者の乏しい血糖コントロールに影響していることが考えられ、家族のサポートの不足を補う、医療者からのサポートがあれば、患者のエンパワーメント力を高めることができると考える。 そこで、早急に患者のエンパワーメントを高めるために、患者の自己管理継続に影響を与える看護師からのサポートを測定する調査票の開発を行う必要がある。そのために、地域で療養生活の支援を行っている看護師の面接内容から、患者・家族の自己管理を支えるために大切にしていること、チームとして支える時に心がけていることをカテゴリーとして抽出し、質問項目として妥当なものを精選した質問票を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在までに3種類の調査票を開発しているため、1種類づつ調査票の精選化を追求するために、測定感度の検討が必要である。DFBCを患者エンパワーメントの測定に使用するためには、家族という文化的側面からの検討が必要であり、日本と米国の文化や家族の一般化された概念が書かれた文献を集め、比較検討することや、文化的側面を考慮に入れて見ていく研究や心理社会的な側面から見ていく研究を行っている研究分担者とのディスカッションの必要がある。また、糖尿病エンパワーメントスケール(DES)は、英語版から日本語版にしていく過程で、翻訳手順でのずれが出ないように、また質問の意図していることには文化的側面も大きく影響するため、ネイティブの研究分担者とのディスカッションが必要となる。そこで、文献、資料の収集にかかる費用や、分担者とのディスカッションを行うための旅費や通信費が必要である。また、開発した調査票が、実践に適応可能であるという評価のために、ジャーナルへの投稿を行っていく必要がある。そのための翻訳料や投稿料が必要となる。
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