研究課題/領域番号 |
23593279
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 洋子 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (90162502)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 意思決定 / decision making / 小児医療 / 情報提供 |
研究概要 |
子どもは自分の健康問題に関する決定に参加し、自分の意見を表明する権利を有することが広く認められている。しかし、病気の子どもに関する治療やケアは、大部分が保護者と医療者の間で決定され、子ども自身の意見やニーズをそれらに反映させる機会は少ない。近年、子どもの意思を尊重した医療提供を進めるために、アセント(assent)、プレパレーション(preparation)など、看護上の取り組みが注目されている。そこで、小児看護における看護スキルを検討する目的で、「子どもの意思決定」の概念を分析した。電子データベース(Pro Quest)により抽出した 論文、並びに国内関係文献をランダムに選択し、「子どもの意思決定」の概念について分析した。 概念分析の方法としてWalker(2005)らによる8段階(8 steps)の概念分析アプローチ(procedures for concept analysis)を参考にした 。 権利としての「子どもの意思決定」の起源は、国連の権利条約にあった。しかし、同概念は規範的概念に位置づけられており、一般的に明確な行動規定や実効性は無かった。医療における「子どもの意思決定」は、先行要件(antecedents)としての「子どもの成長発達状況」「健康問題状況」「保護者の子ども観 、育児環境」と医療提供者の「アドボカシー(advocacy))」ならびに「医療環境」に関連しており、結果(consequences)として「自己実現」「自律性(Autonomy)」「セルフケア行動」が導き出された.「子どもの意思決定」という概念を解明していくことは、小児看護の実践において、子どもの自律性や子どものセルフケア能力(self-care agency)を促進する看護スキルの構築に有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上に述べた、概念分析に用いた諸外国の文献レヴューに加えて、「医学中央雑誌」による邦文論文の文献レヴューを行った。わが国では、病院看護師による実践報告が多く、エビデンスレベルの高い研究は少なかったが、子どもの意思決定が行われている状況について把握できた。これらは、親、医療者を対象とした調査が多く、子ども自身の意思決定に関するデータを取り扱った論文は少なかった。今後は子ども自身を対象として行った研究の検討を進める必要性が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
子ども自身がヘルスケアに関する意思決定をどのように行っているのか、その要因を明らかにするための調査方法を検討する。特に子どもがヘルスケアの意思決定をする場の人的要因として、医師、看護師の認識ならびに意思決定を行う際の条件などを明らかにする。そのために、質問紙調査、専門家に対するグループインタビューを計画している。 また、子どもに対しては、個別の半構造式インタビューを行い、質的文責を行う予定である。対象は、小児がん、あるいは慢性疾患などを小児期に発症し、キャリーオーバーした15歳以上の小児を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の予算執行残額466,440円については、当初の配当額70%程度になる可能性があったため、上半期の学会出席を控え、質的データ分析ソフトなど、予定していた経費を他の一般交付金などを充当したことによる。24年度は、上半期に開催が予定されている関連学会、ワークショップの出席を予定している。 また、専門職集団に対し、グループインタビューによるデータ収集を予定している。その会場などの手配、録音内容のリライト費用(役務)を予定している。加えて、小児に対し、半構造的インタビューを予定しており、了解を得て録音した内容をリライトするための費用を予定している。 研究協力者が限定されるため、研究者が関東までは出向く予定をしており、その交通費、協力依頼者への謝礼などを予定している。
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