研究課題/領域番号 |
23593283
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村山 陵子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10279854)
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研究分担者 |
春名 めぐみ 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00332601)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 骨盤底障害 / 産褥期 / リスクアセスメント / 尿失禁 / 便失禁 / 骨盤内臓器脱 |
研究概要 |
本研究は、産後の骨盤底を早期に回復し、中高年期までの骨盤底障害発症予防を目指したプログラムの提供方法を検討し、継続的支援体制の確立を最終目的とする。そこで1)産後の骨盤底障害発症のリスクアセスメントツールを開発・検証し、2)そのツールに応じたプログラム作成を目標とする。 今年度は1)としてツール開発に向け、産後1年以内の骨盤底障害の症状に絞り、(1)尿失禁、(2)便失禁・肛門失禁、(3)骨盤内臓器脱の発症率と発症に関連する要因についてシステマティックレビューを行い検討した。PubMed等のデータベースを用いて、過去10年以内に発症率と関連要因を報告した論文に限定して検索したところ、(1)31本、(2)37本、(3)7本が該当した。(1)では、初産婦での産後1年以内での発症は11-40%と、各研究で用いた尿失禁の定義等の影響でばらつきがあった。発症の関連要因には、妊娠中の尿失禁経験や経膣分娩等が多くの研究で認められた。(2)では、初産婦の産後1年以内では便失禁が発症率0.69%~47.8%、肛門失禁では8~49%と、やはりその定義や調査時期によりばらつきがあった。関連要因には、3・4度会陰裂傷、出産時の年齢、経膣分娩の経験、2時間以上の怒責などがあげられていた。(3)について産後1年以内の発症率を調査した文献は限られており、産後3か月で56%、6か月で18.1%といった報告があった。発症との関連は、分娩様式別の検討が多く、自然分娩があげられていた。また、大腸肛門科専門医師による講義「肛門機能の温存から再生・再建へ」を企画し、骨盤底後方の障害につき、肛門括約筋など解剖整理、機能や形態の検査法、一般的治療等の知識を深めた。 2)としては、我々の先行研究で開発した産後の尿失禁予防・改善プログラム(平成20~22年度基盤研究C)の結果について様々な視点から効果に影響する要因につき検討、プログラム適用の課題を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で作成を目指すアセスメントツールは、将来的な症状発症の可能性をアセスメントすることを目標としている。そのため、発症のリスクとなり得る要因を詳細に整理する必要がある。文献レビュー、専門家からの知識提供はもちろんであるが、便失禁・肛門失禁の原因として経膣分娩に伴う肛門括約筋の不顕性裂傷が注目されており、その調査と分析結果(研究協力者が中心となり実施)を含め、ツール作成に取りかかる必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、産後の骨盤底障害発症のリスクアセスメントツールの開発・検証を精力的に進める。文献レビューの結果、産後の症状の発症率については、症状の定義が研究者により異なり、定まっておらず、リスク要因が明確に整理できていないことがわかった。そのため、今年度はまず横断調査を実施し、症状とそのリスク要因を明確にするための調査を中心に実施する予定とする。 研究代表者が病院看護部への異動となったことにより、調査フィールドの協力体制は充実したものになると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
産後の骨盤底障害発症のリスクアセスメントツールの開発・検証:発症リスク要因を整理し質問紙を作成、調査を実施したうえでリスクアセスメントツール試案を作成する。その後時期別に対象者を選定し、信頼性・妥当性の評価を行う。 骨盤底障害リスクレベルの個別性に応じた骨盤底ケアモデルの提案:モデル提案に重要なツール使用基準検討のため、骨盤底障害のアセスメント方法、損傷・創傷の治癒を促すケアに関する調査を実施する必要があり、計画を追加修正する。調査は分担研究者が中心となり実施・分析を行うため、分担研究者への経費配分を増額することとした。
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