研究課題/領域番号 |
23593283
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村山 陵子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (10279854)
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研究分担者 |
春名 めぐみ 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00332601)
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キーワード | 骨盤底障害 / 産褥期 / リスクアセスメント / 尿失禁 / 肛門失禁 / 骨盤内臓器脱 |
研究概要 |
本研究は、産後の骨盤底の弛緩・損傷を早期に回復し、中高年期に至るまでの骨盤底障害発症の予防を目指したプログラムの提供方法を検討し、継続的支援体制のあり方の確立を最終目的とする。そこで、今年度は、昨年度の文献レビューの結果、産後の症状の発症率については、症状の定義が研究者により異なり定まっておらず、リスク要因が明確に整理できていないことがわかったため、症状とそのリスク要因を明確にするための調査を実施した。 自記式質問紙調査とカルテ調査による横断研究を実施した。都内1大学病院産科病棟にて過去5年間に出産した女性3776名に質問紙を郵送し、1056名の同意と回答を得た。単胎経膣分娩を経験した670名を分析対象とした。尿失禁と骨盤内臓器脱についてはPFDIを用いて、過去3か月の症状について質問した。肛門失禁については、St. Mark’s Scoreを用いて、過去1か月の症状について質問した。分娩後1年ごとに分けて分析した結果、UDI-6の1項目以上にありと答えた尿失禁症状のある人の割合は46.7~73.1%、St. Mark’s Scoreが3点以上であった肛門失禁症状のある人の割合は17.4~20.9%、POPDI-6の1項目以上にありと答えた骨盤内臓器脱症状の人の割合は32.7~40.8%であった。またリスク要因であったものは、尿失禁では、排泄時の怒責・腹圧・妊娠前の失禁経験・排泄パターン・年齢・産後月数・経産回数・児体重・児頭囲であり、肛門失禁では、年齢と便の性状であった。また、骨盤内臓器脱では、排泄時の怒責・腹圧・排尿回数・排泄パターンであった。 骨盤底障害症状は、程度の違いはあるが産後5年以内は多くの産後女性が経験していること、また分娩時の要因のみならず、排泄習慣や便の性状がリスク要因にあがっていることは、生活習慣改善による症状改善、さらに発症予防の可能性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リスクアセスメントツール作成のためには、産後の症状の有症率を詳細に知る必要があり、さらに産後に特化した発症要因を整理することが欠かせず、昨年度はその調査を大規模に実施した。当初の計画ではアセスメントツール試案の作成としていたが、前述の理由で遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
産後の有症率の変化、その要因について詳細を分析したうえで、症状発症要因の概念図を作成、要因の項目の重みづけを考えて整理し、アセスメントツールの試案を作成するとともに、ツールの信頼性・妥当性を検討する予定である。 具体的には、ツールは産褥1か月健診時に使用するものを想定して作成する。ツール使用時点の①現在の症状を評価すること、②将来的な症状発症の可能性をアセスメントすること、を目標としたツールにする予定である。 ①にはエコーを用いた客観的な評価を行い、症状との関連を分析することを計画している。また、②には、産褥期の生活習慣(食事、排泄、授乳など)の要因も含めていくことができると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
症状のアセスメントにはエコーによる客観的評価との相関による信頼性評価も行うため、調査協力者への謝金が必要である。また測定に伴う物品費が必要である。ツール試案作成では産婦人科および泌尿器科領域の専門家の知識の提供、助言を受ける必要があり、妥当性・信頼性評価には臨床現場の助産師の協力が必要となり、それぞれ謝金が必要となる。
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