研究課題/領域番号 |
23593313
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
鎌田 佳奈美 摂南大学, 看護学部, 教授 (30252703)
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研究分担者 |
石原 あや 兵庫医療大学, 看護学部, 准教授 (20290364)
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キーワード | 子ども虐待 / 入院 / 看護師 / ケアガイドライン |
研究概要 |
本研究の目的は、入院している被虐待児のケアのガイドラインを作成することである。前年度に引き続き、被虐待児のケアに熟練している看護師を対象に面接を行った。合計9名に対し、被虐待児とその家族に対する日常的なケア、チーム間での協力、他機関との連携方法などに関して調査した。結果、入院している被虐待児やその家族にかかわる時、看護師にはさまざまな認知や感情が生じやすく、それらのコントロールを優先しなければならないことが明らかになった。そこで、被虐待児をケアする看護師の認知・感情過程の分析を行った。被虐待児へのかかわりの初期には、看護師は≪ケアへの戸惑い≫≪子どものケアへの自信の揺らぎ≫を経験し、次第に≪子どもへの嫌悪感・拒否感≫を抱くようになったり、あるいは≪子どもや家族から距離がとれない≫状態に陥るといった状況が存在した。しかし、この時点では、子どもや家族に≪振り回されている自分に気づかず≫、看護師自身は≪ネガティブな感情を抱くことへの罪悪感≫をもつようになり、≪周囲からの孤立感≫≪やりがいを見いだせない≫≪心理的な極限状態≫にまでに陥っていた。このような看護師自身の認知や感情は子どもへのケアにも当然影響を与えることが考えられる。 一方、成熟したチーム内では、受け持ち看護師を中心としながらも≪チームで対応する≫ことで、≪客観的に状況を理解≫できるようになる。また、≪看護師の安全が守られる≫体験を通じて、≪子どもの成長がみえる≫ようになり、≪長期的なケア効果を実感≫でき、≪ケアに対する価値観の変容≫が生じていた。そして看護師はケアの≪限界の受け止めとケアの意味を確信する≫までに至ることができていた。 以上、被虐待児をケアする看護師が陥りやすい認知・感情過程やそれらが生じる由来を理解することやチームで看護することの意味や具体的方法について、ガイドラインに含めていく必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度までに合計9名の熟練看護師への面接調査を終了し、現在、面接内容を分析している途上にある。当初面接を予定していた対象者人数の確保が難しく、地域を広げて面接を行ったため、面接の日程調整などに時間を要した。面接内容が豊富であり、分析にも時間を要しているが、被虐待児のケアニーズを抽出し、ガイドライン作成につなげる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は9名の研究対象者への面接調査を実施し、面接結果を詳細に分析し、必要時には質問紙調査を実施する。質的調査および量的調査の結果を分析・統合した上で、被虐待児とその親が必要としているケアニーズおよび、被虐待児とその親のケアに関する看護師の学習ニーズを抽出する。これらの詳細な分析結果からケアのガイドライン試案の作成につなげたい。また、今年度、虐待の親のケアの研究を中心に行っている研究者を分担協力者として加え、分析およびガイドライン(試案)作成を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は最終年度であり、成果報告のために分担研究者との分析会議を頻回にもつ必要がある。そのための旅費、会議費、および分析のためのソフトウエア、パソコンの購入を検討している。また、研究成果発表や資料収集のための旅費を必要とする。 必要時、質問紙調査を実施する予定であり、質問紙作成、発送作業、質問紙送付のための印刷費、人件費、郵送費などが必要である。 最終的には、データ分析結果を含んだガイドライン(試案)を冊子媒体として作成予定であり、それらを調査協力を得ることのできた病院に、配布する。そのための冊子作製費および郵送費を必要とする
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