本研究の目的は、更年期女性の脂質代謝・動脈硬化プロフィールや更年期症状を調査し、授乳経験の有無により比較し、授乳経験が脂質代謝に影響を及ぼしているかを明らかにすることである。これまでに、一般の中高年女性の脂質代謝データとホルモン状態や授乳経験との関係で述べられたものはなく、成熟期からの継続した女性の健康管理を検討する上での基礎資料となることが期待される。 調査項目は、エストラジオール、FSH、プロラクチン、抗ミュラー管ホルモン(AMH)や総コレステロール(T-cho)、高密度リポタンパク-コレステロール(HDL-C)、低密度リポタンパク-コレステロール(LDL-C)、トリグリセリド(TG)、baPWV(脈波伝播速度)、体脂肪を測定し、授乳経験、Simplified Menopausal Index (SMI)、生活習慣等についての質問紙調査である。調査は、初回、6か月後、1年後の3回実施した。初回に40~60歳の更年期女性41名の協力を得て、そのうち2名を除外した。 初回のデータ解析の結果、分析対象者39名のうち有経群は27名、閉経群は12名であり、授乳の有無別に有経/授乳群(17名)、有経/非授乳群(10名)、閉経/授乳群(4名)、閉経/非授乳群(8名)に区分し分析した。閉経/授乳群のT-choは、閉経/非授乳群に比べ有意に低かった(p=0.048)。baPWVは、明らかな相違はみられなかったが、運動や食習慣などの生活習慣や脂質代謝状態も含めて授乳経験との関連が推察された。授乳経験のある閉経後の女性のSMI は低い傾向がみられ、脂質代謝との関連もみられた。有経2群では、脂質データに有意な差は認められなかった。以上のことから、授乳経験は閉経後の女性の脂質代謝や動脈硬化および更年期症状と関連していることが示唆された。今後は、6か月後、1年後のデータの推移を分析する予定である。
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