2011年度は、米国の障がいのある子どもの災害の備えの現状把握のためコロラド大学と付属病院で情報収集を実施。関連概念と文献検討の結果、研究目的である肢体不自由のある子ども自身が自然災害への備えを高めるためのツールは見当たらず、本研究の意義を確認した。 2011年後期・2012年度は、ツール開発のためのインタビュー調査を関東圏内5特別支援学校教員15人、中学部生徒7人、保護者14人、1福祉施設職員と保護者各4人に実施。調査内容を基に教員7人と研究者で5回会議を開催、「災害セルフケアパッケージ‐肢体不自由児用‐(以下、パッケージ)」を開発。在籍する子どもの状況から、対象者を肢体不自由または肢体不自由と軽度知的障がいのある子どもに決定。パッケージは、子ども自身が災害に備えるために獲得/高めることが必要として抽出された9つ(幼児8つ)のセルフケア能力を基に、学校や家庭で、防災教育や避難訓練等で活用できるように作成。子どもの認知能力等に応じた選択を可能とするため、幼児後期、小学低学年、小学高学年、中学以上の4レベルで構成。 2012年度3校、2013年度1校で、小学部低学年4人・高学年5人、中学部9人、高等部5人へ介入。期間は約3か月。介入者は、保護者17人、担当教員23人。介入後のインタビュー調査の結果、教員は子どもへの効果として、必要時に自ら教員に声をかける様子等から、子どもの意識変化を認識。2013年度に、肢体不自由と重度知的障がいのある子どもへの介入の可能性を探るため、1校の中学部7人に約3か月介入。介入者は教員11人。インタビュー調査の結果、教員は子どもへの効果を、助けを求めるために声を出すようになった等と認識。また、教員の認識が重度知的障がいのある子どももできる部分を伸ばしていくことが重要と変化した。本介入により、パッケージ活用の有用性と対象者拡大の可能性が示唆された。
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