研究課題/領域番号 |
23593331
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研究機関 | 東京医療保健大学 |
研究代表者 |
岩崎 和代 東京医療保健大学, 医療保健学部, 准教授 (80408765)
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キーワード | 子宮がん検診 / 検診受診行動 / 検診率 / ポピュレーションアプローチ / 検診環境 / ヘルスリテラシー / 健康教育 |
研究概要 |
H25年度は、量的調査による子宮がん検診の現状と検診環境に関わる物理的条件を示し、どのプロファイルに検診意向を示すかを明らかにした。調査は30歳代前後の幼・保育園・小・中学生の保護者を主たる対象とした自記式アンケート調査と、大手インターネット調査会社を介したweb調査を併用した。web調査は関東圏に在住する20・30歳代の有職女性及び20歳代の未婚女性を対象とした。H24年度に実施した検診受診を拒む要素である物理的環境について、コンジョイント分析手法を用い、検診費用・検診時間帯・(検診時)待ち時間・検体採取者・検診場所の5つの条件に対する8つのプロファイルを提示し、「検診に行きたい」「検診に行っても良い」「あまり受けたいと思わない」「検診に行かない」の4件法で選択してもらい、好まれる支持割合を明らかにした。 検診を促進するための検診環境8プロファイルのうち「検診に行きたい」「検診に行っても良い」の合計86.6%が支持した要件は、「無料クーポン券の利用‐日曜日-60分以内の待ち時間-婦人科女医-総合病院」、次いで「無料クーポンの利用-平日夜間-30分以内の待ち時間-婦人科女医-検診車」の83.7%であった。32.6%と最も支持が低かったのは「2000円-平日日中-60分以内の待ち時間-婦人科女医-検診車」であった。同様な質問で20歳代未婚者(平均年齢25.4歳、有職者51.0%)659名を対象としたweb調査の結果は、有職女性を対象とした調査結果と同様なプロファイルで83.1%、77.1%の順、支持が低かったプロファイルも同様で24.1%であった。 調査結果を元に、がん検診へのリテラシー向上のために、検診の手続きや検診までの心がけ・検診の順序・検診の実際について教材を作成した。 H25年度は日本女性心身医学会雑誌(18:225-233,20013)に論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は子宮頸がん検診(以下、子宮がん検診)の受診行動を通して、世代間の生殖性に関わる健康行動と特性に着目した。調査は、子宮がん検診に対する意識や実態の把握を目的としたフォーカスインタビューによるパイロット調査、パイロット調査による子宮がん検診の現状を元に作成した検診意識と検診意識に寄与する8つのプロファイルを作成し、市場調査の手法を導入したコンジョイント分析を用いて検診環境に対する意向を明らかにする疫学的調査を実施した。調査は本研究が特定にフィールドを対象としているため特定フィールドでの調査とインターネット調査を利用し、特定フィールドが包含される関東圏に母集団をおいた2つの方法による調査を実施した。 フォーカスインタビュー調査および量的調査により、住民健診や職場健診のオプションを利用する保護者世代(幼稚園・保育園・小中学生)の検診率向上に関与する要件や検診経験者であっても検診躊躇につながる不満、またこれまで未検診に該当する女性(学生層・有職女性等)の未検診背景を明らかにした。これら調査結果に基づいてポピュレーションアプローチとして、子宮がん検診に関わるヘルスリテラシーの教育が必要であり、検診対象年齢にある女性を対象とした教材(健康教育プログラム)を作成した。看護系大学2年次の学生を対象に教材を試験的に実施し、より分かりやすい内容への調整を行った。
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今後の研究の推進方策 |
検診に対する正しい情報提供と検診環境の改善、アンケートで明らかになっている婦人科検診への躊躇に対しては、検診のイメージ化による敷居の高さを下げることが早急な改善課題といえる。 H26年に実施予定の健康教育プログラムは20歳以降の女性を対象としものである。その機会をどのように設けるのか、特に働く女性に対する健康教育について検討の余地がある。初年度のインタビュー調査では、地域で開催される講演会などは日中での開催が多く参加時間の調整が困難であったりする。啓蒙機会という点で、保護者や有職女性を対象に教育機会の場の確保も調整していく。 本調査は北関東を調査フィールドの中心に据えているが、女性の特有の健康に対する段階的・継続的・発達的な側面を捉えた教育の機会が必要と考える。研究者は思春期教育で女性特有の健康という観点から、がん検診の意図を伝える機会がある。対象の学習レディネスを捉えながら、世代を考慮した段階的・継続的な教育内容の検討と本調査により教育後の評価を踏まえて、実行可能性の高い、様々に活用可能な女性の健康とがん検診に着目した教育プログラムを実践・評価していく。 検診環境の改善については、働く女性の視点で考えると、土日・夜間の検診時間の検討は急務である。日曜日になると60分以内の待ち時間をそれほど否定していない結果も出ている。無料ーポン券の利用では女性医師の方が検診率は高かったとの報告もあったが、本調査では検診者が誰か、検診場所などの問題よりも、検診に対する時間確保や料金に注目している。これら明らかになった結果を関連学会等で情報発信していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
補助事業期間延長承認済 (26.3.19) 調査票の一部修正と調査実施に関わる通信・人件費への充当
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