本年度の目的はハイリスク母子の出産後早期における応答性の特徴について明らかにし、新生児に対する母親の応答性を高めるための援助方法について検討することである。研究デザインは前向き症例集積研究とし、研究対象はA大学病院産科病棟で出産し、研究協力に承諾が得られたハイリスクおよびローリスクの初産の母子6組とした。研究参加の同意は、出産1日目以降(母子同室による育児開始を確認後)、口頭と文書を用いて研究の趣旨について説明し同意取得を行った。授乳場面における母子の行動評価指標は、Assessment of Mother-Infant Sensitivity Scale 日本語修正版(以下AMIS)を用い、母親の新生児および育児に関する認知評価にはMother and Baby Scale日本語版(以下MABS)、母親の心理的特性としてSTAI状態不安を用いた。その他母子の属性として診療録より分娩様式と異常の有無、新生児の在胎週数および出生体重、栄養方法等の入院中の経過について収集した。統計分析はノンパラメトリック法を用いた。 AMIS母親項目50.5±4.3点、児項目20.0±4.7点、二者関係項目17.2±3.7点、MABS下位尺度A項目16.2±6.6点、UI項目30.4±13.4点、LCC項目30.4±4.8点、IDF項目4.6±3.0点、LCF項目7.6±3.0点、ADF項目9.2±1.8点、STAI状態不安35±6.4点であった。得点間の相関は、AMISの母親項目と母親が認識する児の敏活さrs=0.900およびAMISの児項目と二者関係項目rs=0.829と高い相関が認められた(p=0.05)。以上より、児の覚醒を多く捉える母親ほど、授乳場面における母親行動得点が高く、母親の認識が行動と関連すること、相互作用には母親よりも児の状態がより影響していることが示唆された。
|