研究課題/領域番号 |
23593354
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研究機関 | 園田学園女子大学 |
研究代表者 |
宮田 久枝 園田学園女子大学, 健康科学部, 教授 (70249457)
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研究分担者 |
楢木野 裕美 大阪府立大学, 看護学部, 教授 (90285320)
阿部 正子 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (10360017)
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キーワード | ペアレンティング / 不妊治療 / 子育て支援 / 母親 |
研究概要 |
本研究は、不妊治療での母親の子どもを得ることへの切望を「子育てへの強み」として捉え、母親が子どもとの愛着関係を形成し、親として成長するよう、不妊治療後の母親の妊娠・産褥期を通して親になるプロセスとその育児実態を明らかにし、早期に子どもとの愛着関係を促進するペアレンティング・プログラムを開発し、臨床に普及することを目的としている。 不妊症の扱いは、ここ1-2年で挙児を希望する女性の高年齢化が大きく影響しクローズアップされるようになった。特に、我が国においての出生前診断の採用により高年齢での不妊治療の受療希望者の多さが明らかになってきている。生殖看護の研究では、治療の適応についての議論がされるようになってきており、本研究では調査での研究協力者の再分類を行った。それによって、不妊原因、治療期間、女性のライフスタイルによる調査結果の見直しの必要を確認した。また、不妊治療の普及は、治療に対する社会の認識が変化し不妊治療が一般化してきているため、不妊症に対する当事者の思いによっても、治療への取り組み、子どもへの思いの違いが存在していた。一方、社会での経済格差は不妊治療での挙児・子育ては、夢が達成した裕福な状況であるとする傾向がある。しかしながら、実生活では、高年齢である母親が、少子・核家族のなか、育児は親の責任であり、育児負担となって、社会から孤立した営みであることに変わりはなく、それぞれに問題が存在していた。不妊治療期から子育てを想定したかかわりが必要と思われた。情報量の多い社会の中で、ペアレンティングプログラムは、不妊治療開始時点において、夫婦が「子育て」の概要を理解しておくことは必要であり、その時期でのアプローチに焦点を当てることが有効であると考えプログラム内容についての検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、不妊治療後によって妊娠成立し妊娠中期となった母親に対して、妊娠前から産後4カ月までの状況についての面接調査を行った。この調査は、先行して行われた申請者らの調査によって得られた育児に関係する要因を加味し、現状での育児状況を質問紙によって明らかにすることに加え、母親のライフスタイルでの子育て観について再検討するものであった。また、これまでの調査結果をもとに、一般の母親(自然妊娠)の育児状況を調査・分析した。これには、不妊認定看護師・助産師外来等で産婦とのかかわりを現在行っている助産師の臨床での意見加えた。現在は、一次分析を見直し、不妊原因・治療期間・母親の年齢、子どもの年齢と数、等による二次分析を終えている。 結果、不妊治療によって母親となった女性には、子育ての場面においても「不妊治療であったこと」が意識の根底にあり、子育てに大きく影響している様子がうかがえた。そこで、ペアレンティング・プログラムは、不妊治療開始を意識した時に開始することが有効であるといえ、内容は不妊治療は妊娠することが目的ではなく「人間としての子どもを得ることである」ことで、長期の妊娠してからの経過をも理解する目的で構想し開発中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究協力者の年齢、不妊原因、治療期間等、背景による分類を可能な限り厳密に行い、面接調査内容の再分析を行う。並行して、これまでの面接調査内容について、不妊治療から妊娠・分娩・育児支援という流れの中で「不妊」「子どもに対する思い」「自分自身」「育児」「家族」「夫」「母親となった思い」に関して語られている点について分析し育児状況を明らかにする。其の調査結果をもとにペアレンティング・プログラムを開発し、冊子として臨床での試用、配布を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、まず、これまでの貴重な調査結果を更に詳細な分析を行っていくために使用する。使用内訳は、データ整理・分析の補助のための費用、分析会議費、とする。そして、それらの結果を公表するための学会発表に関する費用(交通費等)とする。加えて、研究協力者に対する結果報告としてニューズレターの送付に使用する。 また、不妊治療の臨床へは、子どもを持つことに関する小冊子を作成し配布することに使用する。
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