研究課題
2010年の「ワクチン接種緊急促進事業」を受け、HPVワクチン接種の対象となる女子中学生とその母親、養護教諭の子宮頚がん・子宮頸がん検診とHPVワクチンに対する理解や受け入れ状態を明らかにし、ワクチン接種と検診による思春期からの子宮頸がん予防という健康づくり戦略モデルを開発することを目的とした。2011年に福岡県下の女子中学生を持つ母親14名にフォーカス・グループ・インタビューによる質的調査を実施した。母親は自分自身の子宮頸がん予防に関連して、娘のHPVワクチン接種の意義を受けとめてはいるが、知識不足による効能やリスクへの不安や躊躇感を持っていた。母親に対する正しい知識の普及や啓蒙のための方策が必要であるとの示唆を得た。2012年に福岡県下の小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校の1,334校の養護教諭にアンケート調査を実施し、養護教諭はHPVワクチンに十分な理解を得ているとは言えず、約半数がHPVワクチン接種に関して相談を受けており、約3割がHPVワクチン接種を推進するべきではないと考えていることを明らかにした。2013年の「子宮頸がん予防ワクチン接種の積極的な推奨の差し控え」により、女子中学生と母親に対する調査の中断を余儀なくされた。2014年にオーストラリア・ビクトリア州の視察を実施し、国家的アプローチによる高い検診受診率とレジストリ-(登録)とともにワクチン接種を含む子宮頚がん対策の実態を把握した。2014年に養護教諭・医療関係者を対象にセミナーを開催し、子宮頸がん予防におけるHPVワクチン・検診の意義の再認識と学校教育における「がん教育」の現状を把握し、子宮頚がん予防教育への示唆を得た。国の副反応等に関する調査と専門家による評価や関連学会の報告を注視し、本研究の中核的な取り組みであるHPVワクチン接種に関わる中学生・母親への調査を模索するも終了した。