女性が仕事と妊娠・出産の両立、さらに育児をしながら就業継続を可能にする社会環境を構築していくことは重要なテーマである。本研究は労働による影響を実証する酸化ストレスマーカー(尿中8-OhdG)と精神的健康度を測定するGHQ28を用い、妊娠時期別(初期・中期・後期)に就労妊婦と非就労妊婦を比較検討する調査を行った。 調査同意が得られた妊婦180名のうち35名を調査対象から除外し、145名を最終調査対象とした。145名のうち、妊娠初期の就労妊婦は94名(64.8%)、妊娠中期の就労妊婦76名(52.4%)、妊娠後期の就労妊婦は35名(24.1%)であった。今回妊娠中の離職率は29名(30.9%)であった。 妊娠時期別の調査によると、就労・非就労に関わらず全ての妊婦においてGHQ28と尿中8-OHdG量測定結果は同様の結果であり、妊娠初期の精神的・身体的ストレス状況が最も高く、妊娠後期になるにつれて低下することが実証され、前回調査と同様の結果を得た。また妊娠初期のGHQ28は初産婦である就労妊婦のほうが非就労妊婦よりも精神的ストレス状況が高い結果が得られた。一方、尿中8-OhdGは全ての時期において就労・非就労に差を認めなかった。 就労・非就労を問わず、妊娠初期の精神的・身体的ストレス状況が最も高い結果は、妊娠初期の悪阻に伴う身体症状を最も強く反映したものと推察することから、産科領域に携わる医療者が妊婦保健指導を行う際は、妊娠初期の就労妊婦への配慮や支援を行う必要がある。初産の就労妊婦は「仕事を続けることへの不安」等の就労要因と、「初めて親になることへの不安と戸惑い」の心理的要因を同時に感じることが精神的ストレス状況が高くなったと推察する。産科領域に携わる医療者や産業保健スタッフは、初産の就労妊婦に対して特に心理的支援を行う必要性がある。
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