研究課題/領域番号 |
23593361
|
研究機関 | 西南女学院大学 |
研究代表者 |
飯野 英親 西南女学院大学, 保健福祉学部, 教授 (20284276)
|
研究分担者 |
原山 裕子 西南女学院大学, 保健福祉学部, 助教 (50593571)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 遺伝看護 / 染色体異常 / 母親 / 精神的ケア |
研究概要 |
本研究は我が国の小児医療・看護・保健領域において,通説として教書や論文に引用される「先天奇形を持つ子どもの出産に対する親の正常な反応に関するDrotarの仮説モデル」を使って母親の心理や精神的苦悩を理解し,看護(診療)に役立てることに限界を感じている.先天異常児を有する両親は,様々な心理的葛藤・悩みをもちながら療育しているが,心理反応の出現時期と強弱は多様であり,妊娠可能期のカップルに対する調査結果からも「世代を超えて病気が遺伝するか否か」によって精神的ダメージとその変化は異なることがわかっている.そのため,対象者を稀な染色体異常を有する児の母親に絞り込み,現在の医療実践に合わせて再検証し,現代の小児医療に合ったモデルを再提示することは看護する上で有用である.本年度は以下の4つの主目的に沿って本研究は推進した.1.研究目的を達成するための調査内容の妥当性を検証し,インタビュー内容を検討する.2.半構成的面接法で調査する心理反応と精神的苦悩の種類を決定し,最終的なガイドラインを決定する.3.面接調査に協力できる小児科・産婦人科の医療施設へ協力の依頼を行う.4.調査可能対象が確保でき次第,調査を開始する.目的の1と2については,研究者間で半構成的面接法を用いて調査する心理反応と精神的苦悩の内容を合議の上で決定した.目的の3と4については小郡第一病院(山口県),みさかえの里(長崎県),いでんサポート・コンサルテ-ション オフィス(東京都)に勤務する臨床遺伝医の協力によって,対象者の確保に努めている.現時点でダウン症,プラダー・ウィリー症候群,4p-症候群など計7名の調査協力を得て調査を行った.途中であるが,その研究成果は国際学術集会での発表で承認を受けたので,報告を準備している状況である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象者を「出生前診断の有無」「疾患の自然暦による予後良好群(報告された寿命が約10年以上)と不良群(10年以下)」に分類し,母親の心理反応の出現時期と強弱,持続期間を分析することを重要な目的と位置づけている.そのため,対象者確保が重要となる.小児臨床遺伝医による研究協力者を確保でき,対象者へのインフォームドコンセントも徐々に進んでいる.初年度は7名であるが半構成的面接を行え,プリミティブなデータを得て,分析を試みた.また,その成果は第23回Sigma Theta Tau International のResearch Conferenceで成果報告することが決まっている.予算執行も次年度への繰り越しは必要なく,執行計画の大きな変更はなかった.
|
今後の研究の推進方策 |
対象者の確保に努めながら,稀な染色体異常児を養育する母親の診断時(とくに出生前診断例に注目する)から幼児期までの精神的変化(ショック,否認,悲しみ,怒りなどの否定的心理反応と希望などの精神的再起や喜びの肯定的心理反応の両方)について分析を進めていく.目的達成を困難にするのは,対象となる母親の確保と予測する.中でも前方視的面接調査は調査回数が年間3回となるため,協力を得にくいかもしれない.その場合,関東方面の小児医療を行う遺伝科に協力を求める.
|
次年度の研究費の使用計画 |
対象者確保のためのインフォームドコンセントとその面接調査旅費を予定している.記録の整理,半構成的面接データの逐語録作成のため研究補助者の雇用経費を,精神的内容のキーワード分析のため統計ソフトの購入を予定している.また,成果発表を行うための国際学術集会への参加も計画している.
|