本年度は以下の目的に沿って研究を推進した.1)精神的経過に沿った母親のケアニーズの分析を行う.2)どの時期にどのような精神的変化が起こり,その時に母親にどのようなケアが必要なのかを明らかにする.母親の概要は平均年齢35.7歳(25-47歳).子どもの染色体異常はダウン症候群6名,プラダー・ウィリ症候群5名,13トリソミー1名,家族性18p-症候群1名, Wolf-Hirschhorn症候群1名,Ehlers- Danlos 症候群(血管型)1名.心理過程では14名全員に「ショック」の心理反応が出現した.不安反応は12名(85%)で最多だった.しかし,否認3名(21%),怒り2名(14%)と低頻度だった.それ以外に,自責の心理が5名(36%)みられた. 同じ染色体異常によっても合併症に対して外科的治療が必要なケースと,内科的に治療するケースではケアニーズが異なっていた.プラダー・ウィリ症候群のように大多数が内科的治療であっても,成長ホルモン(GH)療法や糖尿病のインスリン療法に対する内科的イベントに相関して,母親のネガティブな心理(悲しみ・不安)は増加していた.これに合わせて,親の管理のGH注射法,インスリン自己注射法の手技取得に対する教育的看護介入が必要だった. また,悲しみの感情は出生後から2-3年経過しても消失しないことが確認できた.7名(50%)の母親は,医療者や教育者,親の会の同僚に対して,今までの経過や子どもの状況を話すごとに悲しい気持ちになるという返答が5年近く続いていた.7名いずれも,心理カウンセリングは未経験の母親だった.このことから,悲しみの感情に対する,早期のカウンセリングの必要性が示唆された.
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