研究課題/領域番号 |
23593362
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研究機関 | 福井医療短期大学 |
研究代表者 |
吉田 美幸 福井医療短期大学, その他部局等, 准教授 (50465845)
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研究分担者 |
楢木野 裕美 大阪府立大学, 看護学部, 教授 (90285320)
鈴木 敦子 四日市看護医療大学, 看護学部, 教授 (50196789)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 検査・処置 / 幼児後期 / 自己調整能力 / 支援プログラム |
研究概要 |
平成23年度は、第1段階として、幼児後期の子どもの自己調整機能の概念を明らかにすること、第2段階として、看護支援プログラムの試案作成に向けて、点滴・採血を受ける幼児後期の子どもの自己調整機能に注目し、看護師の捉えた子どもの自己調整機能および、子どもの自己調整機能発揮への看護師の関わりを明らかにすることを目的に調査した。 第1段階では、国内外文献28件を対象に分析した。その結果、幼児の自己調整機能は、欲求や意志が他者(社会)のそれらと拮抗・葛藤した時に生じ、自発的・自覚的な目標や意志により自己の行動、感情、心身の状態などを監視し、適切な方向に導くものだった。 第2段階では、看護師が捉える点滴・採血を受ける幼児後期の子どもの自己調整機能、および、看護師が捉える自己調整機能の発揮への看護師の関わりを明らかにするために、小児看護に3年以上従事する看護師13名を研究参加者とし半構成的面接を行い、質的記述的研究方法を用いて分析した。その結果、看護師は、点滴・採血を受ける幼児後期の子どもの自己調整機能として、子どもが気持ちを主張している姿、葛藤しながらも気持ちを納めようとしている姿、頑張ろうと処置に向かう姿、他者からの評価を受けて頑張れた自己を認識している姿を捉えていた。また、看護師は、点滴・採血を受ける幼児後期の子どもの自己調整機能の発揮に繋がった関わりとして、子どもの自発性の発揮に向けての関わり、子どもを尊重し足場を提供する共同活動としての関わり、共感的フィードバックへの関わりを捉えていた。そして、看護師は、このような幼児後期の子どもの自己調整機能や自己調整機能発揮への関わりを、個々の経験から感覚的に判断しケアに繋げていた。今回明らかになった看護師の経験知から捉えられた自己調整機能を発揮している子どもの姿や看護師の関わりを自覚し、意図的に子どもに関わることの必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検査・処置を受ける幼児後期の子どもが調整能力を発揮できる支援プログラムを開発し、その効果を測定するために、平成23年度は、第1段階として、文献を基に幼児後期の子どもの自己調整機能の概念を明らかにすること、第2段階として、検査・処置の中でも医療処置としてよく行われ子どもにとっても痛みを伴いストレスが高いと考えられる点滴・採血時の幼児後期の自己調整機能を発揮できるための看護支援プログラムの試案作成に向けた支援内容の抽出を行うことを計画した。平成23年度の実施状況は、計画した第1段階、第2段階の内、第2段階目に計画した先行研究からの検査・処置場面での幼児後期の子どもの自己調整能力を引き出す要因の抽出については、途中経過中であり、当初計画していた予定より時間を要している。検査・処置場面での幼児後期の子どもの自己調整機能に関する研究論文は国内では1文献のみであり、関連すると思われる子どもの対処行動に関する文献について幅広く調査検討しH24年度計画と同時進行で行う予定である。その他の、第1段階および第2段階の看護師を参加協力者とした調査は終了しており、H24年度計画実施に取り組める状況である。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の研究実施計画の方向性に変更はない。平成24年度は、これまでの調査結果を基に、第3段階として「調整能力発揮への支援プログラム」の試案を作成し検討する。具体的には、以下の計画を実施予定である。1.先行研究およびインタビューから明らかになった看護師の関わりから、点滴・採血を受ける幼児後期の子どもが調整能力を発揮できるための看護支援プログラム試案を作成する。2.研究協力への同意が得られた病院で、作成した「調整能力発揮への支援プログラム」の試案に対する看護師と研究者による検討会を1/月程度開催し協議し、試案を精選する。3.評価指標の検討を行う。 平成25年度は、第4段階として、「調整能力発揮への支援プログラム」試案の実施と評価を行う。具体的には以下の計画を実施予定である。1.研究参加への同意が得られた看護師により、「調整能力発揮への支援プログラム」の試案を実施する。その際、点滴・採血を受ける子どもおよびその保護者の同意を得た上で行う。点滴・採血を受ける幼児後期の子どもとその場面に関わる看護師各30名を研究参加者とし、介入群と対照群に分ける。対照群には、これまでにその病棟で行われていた通常のケアを行い、介入群には「調整能力発揮への支援プログラム」の試案を実施する。2.「調整能力発揮への支援プログラム」試案の実施状況を踏まえながら1/月程度検討会を開催し、実施の評価をする。「調整能力発揮への支援プログラム」の試案対象者の介入群の子ども・医療者の変化をとらえて、実践の分析を試み、効果判定をする。最後に、本研究の全体について、得られた結果を取りまとめ、成果の発表および報告書を作成し、点滴・採血を受ける幼児後期の子どもが自己調整能力を発揮できる看護支援プログラムを提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、検査・処置を受ける幼児後期の子どもの看護支援プログラムの支援項目作成のための図書、文献を検討するための調査・研究費や研究代表者、研究分担者間の会議を要する。さらに、試案の検討、実践、効果判定のための検討会開催のため、ビデオカメラの経費および調査・研究費を計上している。
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