妊娠・分娩経過に関連する妊婦の体水分に関する検査値・推定値と水分摂取を特定するため、健康な単胎妊婦を対象に、生体インピーダンスの測定、診療録レビューおよび質問紙による前向きコホート調査を実施した。対象への調査は、妊娠26~29週と妊娠34~36週の2回行った。リクルート数は340名、分析対象は332名(84.1%)であった。 平成25年度は、データの分析と評価を行った。分析に用いた生体インピーダンスの値は、細胞内液、細胞外液を反映するインピーダンス(電気抵抗)の構成成分であるレジスタンス(R)である。 Rの平均値に有意差がみとめられた妊娠・分娩異常は、「切迫早産およびその疑い」(p<0.01)、「妊娠期の血圧上昇」(p<0.05)、「低出生体重」(p<0.01)であった。「切迫早産およびその疑い」と「低出生体重」はRが高く体水分が少ない可能性が示唆され、「妊娠期の血圧上昇」はRが低く体水分が多い可能性が示唆された。 「切迫早産およびその疑い」を目的変数、体水分に関する因子・指標を説明変数とした多変量ロジスティック回帰分析の結果、Hbが高いと「切迫早産およびその疑い」のリスクが高くなることを示唆するモデルが作成された。「切迫早産およびその疑い」、「低出生体重」、「妊娠期の血圧上昇」を目的変数としたパス解析では、すべての目的変数にRあるいはHbからのパスを描くことができ、「切迫早産およびその疑い」と「低出生体重」では、RあるいはHbが高く体水分と血漿量が少ない可能性、「妊娠期の血圧上昇」では、Rが低くHbが高い、つまり、体水分は増加しているが血漿量は増加していない、という可能性が示唆された。 妊婦の体水分に関する検査値・推定値と体水分の変化に関する病態との関連性が示唆された。今後、妊娠期の健康につながる体水分評価指標の項目と基準値を具体的に規定するため、さらに研究を進める必要がある。
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