先行研究において、過疎化・高齢化が進んだ小離島では、島民のQOLの維持の面からも、機能しなくなりつつある島民同士の相互扶助を補完する新しい相互扶助の必要性が示唆されている。そこで、本研究では、島民と大学生が協働することによって、「楽しく老いる島づくり」の実践モデル構築と、島民のQOLに与えた影響を明らかにすることを目的とした。 初年度は、島民が持っている古い写真を借り受けるとともに、学生が写真に写っている当時の貴重なエピソードを聞き取り、それらを20枚の写真パネルにして、写っている実際の集落内や遊歩道に展示した。島民や観光客にパネルを見ながら楽しく散策していただくために、パネルの場所を示したマップも作成した。次いで、住民51名を対象にPDCモラルスケールを用いて、主観的幸福感の聞き取り調査を行った。幸福感と関連があった。 2年目は、古い写真を借り受け写真パネルにして展示することを継続した。また、学生が高齢者へのインタビューを行い、島での暮らしや人生を語ってもらうことで、自己の人生の再評価を行い、自尊心の向上に繋げる取り組みを行った。 3年目は、島が瀬戸内国際芸術際のフィールドとなったため、古くなったパネルの掛け替えや、マップの修正と作成を行い、島の交流館やコミュニティセンターに置いて、観光客が地図を見ながらパネルを見て回るという企画を実施した。この企画が観光客に好評で、市報にも掲載された。学会においても3年間継続して活動を紹介している。 最終年度は、古くなったパネルの掛け替えやマップづくりを継続した。島のコミュニティセンターが、サロンづくりの具体化を進めているため、学生が防災という観点から設置場所等を聞き取り調査した結果を、コミュニティ協議会や防災組織の代表に提言した。
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