研究課題/領域番号 |
23593376
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
西嶋 真理子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50403803)
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研究分担者 |
井出 彩子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70533074)
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キーワード | 発達障害児 / 前向き子育て / 子育て支援 / トリプルP / ランダム化介入研究 |
研究概要 |
2歳から12歳までの発達障害の子どもの親から前向き子育てプログラム(グループトリプルP)の参加者を募り、申込みのあった12名を対象にグループトリプルPを実施した。12名を無作為にA群とB群に6名ずつに分け、先にA群を介入群としてグループトリプルPの介入を行い、対照群であるB群と比較して、調査表を用いて、介入による効果を分析した。その結果、対照群には変化がなかったが、(1)子育て場面でのふるまい(PS)は、介入群において「手ぬるさ」「総合スコア」が低下する傾向にあった。(2)子供の行動の難しさ(SDQ)は介入群において「感情的症状」が低下する傾向にあった。3)抑うつ・不安・ストレス(DASS)は、介入群で「抑うつ」が低下する傾向にあった。対照群では有意ではないが、不安のスコアが増加していた。(4)親としての感じ方(PES)では介入群で「パートナーとの協力度」が低下する傾向にあった。 さらに全セッションの会話を参加者の同意を得てICレコーダーに録音し、逐語録を作成したものを複線径路・等至性モデル(以下、TEM)2)を用いて質的に分析した。その結果、参加者全員が通過している必須通過点(以下、OPP)が4つ設定された。グループトリプルPの参加により、参加者全員が複数の課題に取組みながら、OPP1からOPP4までの過程を繰り返し経験し、等至点に到達したことを確認した。親は子どもの行動を記録する宿題を通して子どもを深く観察し、子どもと話し合い、子どもと親の本当の課題に気づいたと考えられた。更に、親が課題に気づいた際、状況に応じた解決策を選択できるよう具体的な子育て技術を提案し、親はこれを自分の家庭に合わせて選択し活用できていた。 これらのことより、今回実施した発達障害児の親への前向き子育てプログラムは子どもの行動、親のふるまい、親の抑うつともに効果が見られ、そのプロセスを明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献レビュー、就学前から学童期の発達障害児の養育者が抱える養育上の困難や躓きについての検討、トリプルPの啓発活動を経て、24年度は、希望者を広く募って確保でき、対照群と介入群を設定し、前向き子育てプログラムを介入し、介入の効果を測定することができた。計画通りに研究が進み、予想を十分支持する効果が得ることができた。 また新たにトリプルPの介入を希望する養育者が増え、問い合わせを受けることもあり、啓発の効果があったと考えられた。さらに、介入群をフォローアップすることで、持続効果の確認の必要性も示唆される等、研究の達成度は高いと判断された。
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今後の研究の推進方策 |
前向き子育てプログラムに参加を希望した方のうち、無作為割り付けで対照群となった群には、先に介入した群に続いて、すでに介入を行っている。今後は、介入群を増やして、介入の効果のエビデンスを高めていきたい。また、ファシリテートの質を高める研修会などを行い、効果的な育児支援により、虐待や問題行動に繋がりやすい発達障害児の育児をより前向きで、楽しい建設的なものへと向かうよう支援方法を確立していきたい。 地域の発達障害児の親の会からの理解と協力が得られているので、25年度は地域を広げて介入を実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前向き子育てプログラムの介入と分析に要する費用が必要である。 人件費、会場費、託児費、教材費などである。 また、学会発表や論文作成も計画しており、旅費や投稿料等にも充てる予定である。
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