研究実績の概要 |
自己効力と結果期待は, 人がその行動を遂行するか否かに関与している心理的な要因であるとされているが, これまで中高年者を対象とした健康増進の運動行動に対するこの2つの期待を測定する尺度が開発されていない. そこで本研究は, 平成23年度から4年間にわたり中高年者のための運動行動に対する自己効力および結果期待の尺度を開発し, 研究最終年度では, その尺度を用いて前向き研究を行った. 研究参加者は広報等を利用して募り, 基礎調査, 3か月後調査, 6か月後調査と合計3回同じ質問に回答した. 調査の結果, 基礎調査から6か月後調査までの全調査に参加したのは50人中46人で, 脱落率が約8%であった. その参加者の平均年齢は62.9歳, 性別が男性7人, 女性39人であった. 参加者が調査期間中に行った運動の強さはやや弱い運動で, 1回の平均運動時間は約60分, 1週間の平均運動日数が約4日であった. また, 自己効力の平均は基礎調査1-4, 3か月後調査2-4, 6か月後調査2-4, 結果期待の平均が基礎調査1-3, 3か月後調査1-3.5, 6か月後調査1-4と推移し, 時間の経過とともに上昇傾向が見られた. そして, 基礎調査の自己効力と3か月後調査の運動遂行度がr=.23-.24, 基礎調査の自己効力と6か月後調査の運動遂行度はr= .23- . 29, 基礎調査の結果期待と3か月後調査の運動遂行度がr=.21- . 28, 基礎調査の結果期待と6か月後調査の運動遂行度はr= .14- . 21とそれぞれ弱い正の相関があった. すなわち, 基礎調査において成功裏に運動を遂行する自信があり, 運動には結果が伴うと期待している人ほど, 3か月後, 6か月後に運動を行っていた. 結論として, 自己効力と結果期待は中高年者の運動行動を予測する要因であると思われる.
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