研究概要 |
本研究の全体構想は、我が国における幼児の発達障害に対する地域での包括的支援システムを構築することである。その全体構想の中での本研究の目的は、同システムにおける具体的な一方策として研究者らが開発した‘幼児の健康問題に対する保護者の援助要請(Help-Seeking)概念モデル’に基づく包括的な発達支援システムを提言することである。 1年目は、それまでの援助要請に関する概念分析の研究成果を踏まえ、幼児期後期の 主たる養育者である母親の援助要請の実態調査を実施した。2年目は、実態調査の結果から、母親の援助要請への影響要因を検証した。最終年度にあたる平成25年度には、調査研究による結果を基に、今後の地域保健における取り組みの方向性を検討した。母親のHSに影響する要因は,支援により,HSの促進要因にも抑制要因にもなり得る.したがって,育児・発達支援に携わる保健師には,母親の子どもに対する期待や心情を踏まえつつ,これらの影響要因ができるだけHSの促進に働くように支援をすることが求められる.具体的には,母親が子どもの発達を正しく認識するために,子どもの発達に関する情報提供や学習や,健診などの場において、子どもの発達を専門職とともに確認をする機会を提供することが有効であると考える.また,地域における子どもの発達を支援する機関や専門職の適正配置,これらの間を結ぶネットワークの整備も欠かせない.さらには,地域の人びとを対象とした発達障害に関する啓発活動を行い,気がかりに対してHSをしてもよいのだという地域の風土を醸成するなど,母親が適切なHSを発揮できる包括的な発達支援システムを構築していくことが望まれる. 今後は,さらに検証を重ね,母親のHSの概念モデル構築,支援プログラム・評価指標の開発をすることが課題と考える.
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