本研究は、医療施設と保健福祉関係機関が密接に連携した感染対策システムの構築と保健師のための感染症対策専門相談員教育課程の構築の2本柱で2011年度より開始した。2011-2014年度までに、全国の県庁と保健所における感染制御活動(医療施設との連携を含む)の実態と研修ニーズを明らかにした。次いで、高齢者介護施設における感染制御の実態と集団感染の実態を明らかにした。これらの結果をもとに、研究代表者の所属大学の地域貢献事業として、保健師等の職員を対象にニーズ応じた感染制御の研修を開催することができた。しかし、①精神科病院の看護師における手指衛生行動に関する調査と②新型インフルエンザに感染した看護師の体験に関する調査が終了できていなかったため、2015年度まで研究期間を延長し以下のように成果が得られた。 ①精神科病院の看護師における手指衛生場面と手指衛生遵守率の検討 精神科病院での看護に必要な手指衛生場面と手指衛生遵守率を検討した。1病院の看護師13名を対象に手指衛生行動を非構成的観察調査法にて調査した。手指衛生遵守率は12.0%であった.手指衛生遵守率はICU入室前後が最も高く(13.3%)、食事介助前、患者に直接薬を飲ませる前および詰所内の環境に触れた後には手指衛生を認めなかった。ドアやICUの入り口近くに手指消毒薬を設置することで手指衛生遵守率が向上すると考えられた。 ②インフルエンザA(H1N1)pdm09に感染した看護師の体験の検討 新型インフルエンザに感染した看護師が感じたことについて6名に面接調査を実施し質的帰納的に分析した。看護師は、新型インフルエンザに感染した直後に【驚きとやるせなさ】を感じ、一方で【認識不足】の中で感染した看護師は[罪悪感]を抱いていた。また、看護師は【感染を拡げることの恐怖】【隔離によるストレス】【他者に知られることの不安】を強く感じていた。
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