研究課題/領域番号 |
23593399
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
池添 志乃 高知県立大学, 看護学部, 教授 (20347652)
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研究分担者 |
野嶋 佐由美 高知県立大学, 看護学部, 教授 (00172792)
中野 綾美 高知県立大学, 看護学部, 教授 (90172361)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 発達障害 / 養護教諭 / 協働支援プログラム / 子どもと家族 |
研究概要 |
発達障害の子どもと家族を支援した経験のある養護教諭の体験及び実践した支援、連携内容を明らかにすることを目的に半構成的面接を実施した。データ分析では逐語録を作成し、コード化、カテゴリー化を行った。結果として、以下の視点が明らかになった。援助姿勢として、子どもの人権を守る、説明責任を果たす、説明し同意を得た上で行動する、子どもと家族の意思決定を尊重する、子どもと家族を認める、自己の専門性を高めるといった視点が挙げられた。また状況への不確かさや子どもの居場所のある学校生活を整えたいという家族の思いをふまえ、主治医との連携・協働のもと病気や症状管理、子どもへの関わり方への指導・助言など教育的支援がなされていた。また家族が孤立せず地域や周りの人とつながることの重要性を認識し、活用できる資源の特性の事前把握や専門職者との信頼関係の構築など地域社会資源の活用への準備性を持つようにしていた。保護者や主治医、教職員との協働関係を基盤とした情報連携、支援連携を行っていた。専門医から方向性の判断を得るなど自らの取組の正当性、妥当性を確認し根拠をもった支援方法を実践していた。そして子どもの人権を守ることを主眼に置き、共有範囲の同意のもと発達障害の子どもが他の子どもから固定観念をもたれないうちに発達障害の特性について他の子どもに説明し理解を深め子どもの対人関係の調整を図るよう取り組んでいた。その子らしさを認め、子どもの困りごとを予測して関わり子どもの自己肯定感、自尊感情を育むよう関わっていた。家族に対しても情緒的支援の提供を行いながら家族の強みに注目し、家族の力を強化していくよう取り組んでいた。養護教諭は自らの専門性の向上を図りながら、経験知・理論知から導かれた技を駆使し連携・協働に取り組んでいたことが明らからになった。本結果を今後の「協働支援プログラム」の作成につなげていきたいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の目標は、発達障害の子どもと家族を支援した経験のある養護教諭の体験および実践した支援、連携内容を明らかにすることである。具体的には、1.援助姿勢、2.情緒的反応、3.子どもと家族のニーズ、4.実践した支援、5.連携内容、6.連携におけるニーズ、7.支援する中での困難等について明らかにすることである。養護教諭を対象とした半構成的面接法を実施し上記内容について抽出することができた。 平成24年度は、ここで明らかになった援助関係の形成、発達障害の子どもと家族への支援、医療機関等の専門機関との連携の視点から『発達障害の子どもと家族を支える支援』について検討し、「発達障害の子どもと家族を支える養護教諭の協働支援プログラム」(試案1)を作成することとしている。実践の場での活用可能性・有用性の高い試案の作成を行うためには、養護教諭を対象にして導かれた支援・連携内容、子どもと家族の情緒的反応・ニーズだけでなく、さらに新たな視点からデータを抽出する必要があると考える。特に発達障害をもつ子どもと家族への関わりを密に行っている他の教員や家族を対象にした体験の理解が不可欠であるため、その視点を深め、次年度の取り組みにつなげることとする。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、さらに既存の文献検討や特別支援コーディネーターを兼務する養護教諭、特別支援教育に携わる教員に対して半構成的面接を行い、子どもと家族の情緒的反応やニーズ、子どもと家族に対する援助姿勢と支援内容、校内外の連携内容、支援する中での困難について明らかにし理解を深める。特に県内外でのエキスパートの養護教諭、教員に対して研究協力を依頼し、より豊かな支援内容、連携内容を抽出するようにする。また子どもと家族の体験の理解については、家族に対して半構成的面接を行い、体験を踏まえた支援、連携内容につなげていくようにする。以上のデータ分析から、『発達障害の子どもと家族を支える支援』における援助関係の形成、子どもと家族への支援、専門機関との連携内容に分け、より豊かな内容を抽出し、「発達障害の子どもと家族を支える養護教諭の協働支援プログラム」(試案)を行っていくようにしたいと考えている。当初の予定より「発達障害の子どもと家族を支える養護教諭の協働支援プログラム」(試案)プログラムの試案作成時期が遅くなる可能性があるが、上記研究プロセスを行うことにより有用性の高いものにしたいと考える。その後、アクションリサーチを実施し、作成した協働支援プログラム(試案1)を実践で活用してもらい、協働支援プログラム(試案2)を作成する。さらに洗練化をはかるため、再度作成したプログラムを実践の中で活用してもらい、協働支援プログラム(試案3)を作成する。これらのプロセスは、養護教諭と研究者が協働関係のもとで、養護教諭が医療機関等の専門機関と連携しながら発達障害の子どもと家族を支える効果的な支援を行っていくことができるような協働支援プログラムを開発することを目的とする。養護教諭と研究者とともに検証し、協働支援プログラム(試案)を修正し実践での活用性・有用性の高い内容に洗練化していくようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費については、ウイルスバスター更新料、フラッシュメモリー、文具類(用紙・封筒・筆記用具等)、研究協力者へのお礼(3000円相当の文具×15名)、教育・学校保健・小児関連書籍(発達障害の子どもと家族、不登校の子どもと家族、養護教諭や家族看護に関する書籍文献等)を予定している。 国内旅費については、調査旅費、情報収集(学会参加)のための交通費・宿泊費を予定している。とくに平成24年度は、より有用性の高いガイドラインの作成のため、平成23年度の研究では十分把握することができなかった援助姿勢や家族の情緒的反応やニーズなどの体験、支援や連携内容、連携におけるニーズ、支援する中での困難についてデータ収集したいと考えている。そのため県内外でのエキスパートの養護教諭、教員に対して研究協力を依頼し、より豊かな支援内容、連携内容を抽出するようにする。その旅費、情報収集(学会参加)のための予算として平成23年度分の残額を平成24年度の予算として計上することとする。 謝金等については、アンケートのデータ入力・質的データ整理・英語文献整理・資料作成、データの掘り起こし[60分のテープの掘り起こし1万2千円程度]15名分、専門的知識の提供(10000円×5名)を予定している。その他として、印刷費、複写費を予定している。
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