本研究の目的は,養護診断過程において学校教育下の子どもの健康問題を早期に発見するための心理的・社会的アセスメントの指標を開発することであった.平成23年度は,全国の小学校・中学校・高等学校各1000校(計3000校)を無作為抽出し,養護教諭が行う心理的・社会的アセスメントの実態を重要度と実施度の視点から調査した.結果は重要度が実施度を上回ったものが30項目中28項目存在しそれらには有意な差が認められた(Wilcoxon 符号付き順位検定).それらを優先改善項目とした.平成24年度は,重要度に関する質問群に数量化III類を適用して検討した.結果,5つのグループが認められ,養護診断過程における心理的・社会的アセスメントの指標は5指標であることが示唆された.優先改善項目は5指標のうち2指標に集約された.学校種別に検討した結果,小学校と中学校・高等学校で有意な差が認められた.勤務経験年数別に検討した結果,経験の少ないものに実施度平均得点が有意に低かった.以上のことから,経験の有無に関わらず系統だった心理的・社会的アセスメントを実施するためには,5指標に基づいた下位項目を開発しそれらを学校種別に検討していくことが求められた.平成25年度はこれらの成果を日本健康科学学会に論文投稿し,原著論文として掲載された(日本健康科学学会誌,第30巻,第1号,2014年,1-8).また,養護診断開発に活かせるよう,養護診断開発研究会(連携協力者と共に運営)のwebサイトに掲載した.今後は学校種別下位項目の開発が課題である.
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