研究課題/領域番号 |
23593408
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
山崎 恭子 東海大学, 健康科学部, 准教授 (70347251)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 働く母親 / 育児 / ワーク・ライフ・バランス / 職業性ストレス |
研究概要 |
今年度は育児中の女性労働者を対象に企業で調査を実施することを計画していたが、震災の影響で企業が節電を実施するなど、就業状況が不安定であることを鑑み延期することにした。そこで、(1)次年度に実施する予定となる就業女性の育児と職業性ストレスについて文献レビューと(2)女性従業員が40%を占めるA社の労働安全衛生担当者に対し「就労と育児について」ヒアリングを行った。 (1)文献レビューは「就労」「女性」「育児」をキーワードに原著論文、「育児・介護休業法」が施行された1992年4月以降に調査された文献を対象に行った。 検索されたすべての文献は204件であった。そのうち、乳児、幼児を育児中の働く女性を対象に就労に影響を及ぼすストレスについて検討している文献は24件、うち、看護師・助産師のみを対象にしているものが16件であった。文献検討では対象を看護師に限定した文献を除外し、一般の働く母親を対象とした8件を分析対象とした結果、働く母親の就労に及ぼす要因は職場環境や母親自身の仕事や家庭に対する価値観などがあげられた。この文献レビューは投稿予定である。 (2)A社におけるヒアリングでは、企業での母性管理について対応を行っているが、就労女性の育児をサポートする夫である従業員が育児のため仕事を思うように実施できずストレスを感じているという新たな課題が発見されたため、働く女性の育児の不安の現状を把握する際、育児中の男性社員にも焦点をあてる必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、働く女性の出産・育児が職業関連ストレスに与える影響とさらにそこから生じる不安やうつ状態に対して、職域で労働者を対象に保健活動をする産業保健師と地域で妊娠、子育てをサポートする行政保健師が連携することにより、今まで見過ごされてきた働く女性の育児と仕事から引き起こされる不安やうつ状態を予防・改善することである。 今年度は、国内外の職域における母子保健の現状に関する文献を検討し、乳幼児を育児中の母親の就業に影響を与えるストレスについて文献レビューを行った。企業に就労している育児中の母親にストレスに関する先行研究は8件で、育児中の看護師を対象とした研究についても8件となっていた。出産、育児を期に退職するM字型は両方に共通している課題であった。また、企業で就労している母親では就労形態が育児上のストレス要因となっていた。そして、就労を継続するための要因として育児サポートの存在があげられた。一方、A社の労働安全衛生担当者に対するヒアリングによると、企業の現状として育児中の母親の就業上のストレスだけでなく育児をサポートする育児中の父親の就業上のストレスが課題となっていることがあげられた。 働く女性の育児と仕事から引き起こされる不安やうつ状態を予防・改善のために研究を継続するにあたり、一般企業、看護師、そして育児中の父親にも焦点をあてる必要があることが今年度の研究により示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、前年度に研究対象としていた企業等で震災の影響もあり、業務体制に影響がでていたため調査を実施できなかった。そのため、A者の安全衛生担当者へのヒアリングを行ったところ、育児中の労働者における職業性ストレスや不安は女性だけでの問題ではなく男性にも重要な課題となっていることがあげられた。したがって、育児中の就労男性を含めて実態を明らかにし、地域社会での支援を検討していく必要がある。また、文献検討により育児中の就労女性は雇用形態や職業によって、不安やストレスが異なるため、研究対象も一般企業の就労女性と専門職である看護師に分けて調査する必要がでてきた。また2007年に国は、育児、介護支援も含めた「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)憲章」を策定し、ワーク・ライフ・バランスを実現するための制度的枠組みの構築や環境整備といった促進策に積極的に取り組でいる。しかし、企業、労働者ともにワーク・ライフ・バランスへの関心は低いままであり、国の対応も十分であるとは言えないのが現状である。そこで、今後の研究推進方策は(1)育児中の看護師と育児中の看護師の夫を対象に、不安およびストレス要因、ワーク・ライフ・バランスの実態把握をする (2)一般企業において育児中の勤労者を対象に不安およびストレスの要因、ワーク・ライフ・バランスの実態把握をする (3)出産後から職場復帰をするまでの不安要因について文献検討および学会などで情報収集をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
●育児中の労働者を対象にした調査(1)消耗品等:解析用のソフトウェア・記録媒体・資料整理用ファイル・調査票郵送費・印刷、封筒代(2)国内旅費等:聞き取り調査、質問紙調査の研究フィールド調整、(研究協力者の調査旅費を含む)、成果発表および情報交換のための国内学会参加旅費(研究協力者の費用を含む)(3)外国旅費:先行研究者らとのディスカッションのため国際学会への参(4)謝金:研究補助として資料整理やデータ分析のために、必要経費(1人4万×10か月程度)●企業の人事労務担当者を対象に面接調査(1)消耗品など:記録媒体、ICレコーダ(2)謝金:調査対象企業への謝礼●その他研究協力者たちとの会議費
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