研究課題/領域番号 |
23593408
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
山崎 恭子 東海大学, 健康科学部, 准教授 (70347251)
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キーワード | 働く母親 / 復職支援 / 職業性ストレス / 育児 / ワーク・ライフ・バランス |
研究概要 |
今年度は2011年度に行った文献検索をもとに育児中の女性労働者のうち①看護職を対象に職務満足感とワーク・ファミリー・コンフリクトに関する調査を実施した。また、2011年度に実施したA社の労働安全衛生担当者に対するヒアリングから、企業の現状として育児中の母親の就業上のストレスだけでなく育児をサポートする育児中の父親の就業上のストレスが課題となっていることがあげられたため、②育児中の看護師をサポートするパートナーのストレスについても検討した。①子育て中の看護師のワーク・ファミリー・コンフリクトと職務満足感との関連では、A大学病院に勤務する中学生以下を養育している看護師147名を対象に職務満足度とWFCS (Work-Family Conflict Scale 日本版)による質問紙調査を実施したところ、仕事が家庭に及ぼす葛藤への影響を低下させるには、職場の良好な人間関係であった。②子育て中の看護師のパートナーにおけるうつ傾向とワーク・ファミリー・コンフリクトならびに職業性ストレスとの関連は、看護師として働いているパートナーサポートするため、家事や育児の負担がかかり、パートナー自身の仕事への影響がでてくるのではないかと推察した。そこで、A大学病院に勤務する中学生以下を養育している看護師147名のパートナーを対象に調査したところ、看護師の配偶者を支えている者は家庭に費やす時間が仕事へ影響することによってうつ傾向となっていた。 日本ではワーク・ライフ・バランスが施策としてあげられ、夫婦共に家庭への時間を持つことが勧められている。したがって、男女ともに快適に働くことができる社会のサポートの必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、働く女性の出産・育児が職業関連ストレスに与える影響とさらにそこから生じる不安やうつ状態に対して、職域で労働者を対象に保健活動をする産業保健師と地域で妊娠、子育てをサポートする行政保健師が連携することにより、今まで見過ごされてきた働く女性の育児と仕事から引き起こされる不安やうつ状態を予防・改善することである。 今年度は、働く女性の育児が職業性ストレスに与える影響を探るため、まず、子育て中の看護師を対象に職務満足感とワーク・ファミリー・コンフリクトに関する質問紙調査を行った。今回の結果から、仕事から家庭への葛藤が高くなると看護師相互の関係への満足度は低くなり、仕事上の責任を果たそうとするで、仕事による精神的負担が高くなり家庭への役割を遂行することが難しく、そのような状況にあると、看護師同士の関係にも影響を与えている可能性が示唆され、職場の良好な人間関係の維持が、育児をしながらの看護職の継続に重要なことも示唆された。一方、子育て中の看護師のパートナーにおける仕事と家庭のバランスの理想と現実のギャップと職業性ストレスとの関連でも看護師の配偶者を支えている者は家庭における義務を果たすことが仕事への妨げとなり精神的健康度が悪くなっていた。 今後、看護師を対象とした調査だけではなく、地域住民を対象に働く母親の葛藤や不安、職場環境の状態を把握するとともに、地域、事業場が実施可能な育児サポートを考えていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
産業保健の場で母性管理を実施している企業は少なく、またその体制や教育は不十分である。さらに、出産から職場復帰までに生じる不安やうつ状態に関しては、把握されておらず、また、対策も考えられていない。ワーク・ライフ・バランスが政府の取り組みで行われているが、徹底されていない現状を踏まえ、働く女性の出産、育児が産後のストレス因子となっている可能性が否定できないため、その実態を把握し今後の事業場の支援体制を検討する必要がある。そこで、最終年度である今年は、働く母親の実態を広く探ることで、課題を明確化し支援の在り方につなげることを目的とする。今年度は①地域の保健センターおよび②保育園で実態調査を実施する。 ①地域の保健センターでは復職前と考えられる4か月児健診にて2013年6月~12月に受診する母親、約1200人を対象にうつ状態、復職予定の職場環境、復職への不安を把握する。また、仕事を続けるために支援の在り方について自由記載にて実情を把握する予定である。 ②保育園で調査は3~5か所の施設で園児の親、約500組(約1000人)を対象に、現在勤務している事業所の育児支援サービスの実態ならびに職場環境の違いが、どのように職業性ストレスおよびワーク・ファミリー・コンフリクなどに影響を与えているかを把握する予定である。 これらの調査により育児支援の在り方と職業性ストレスならびに不安の関連が明らかになる。今年度は地域の市町村保健センターや保育園と協力し調査を実施することで、今後の育児支援の在り方を地域・職域連携を含めて検討することができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
I.地域の保健センターでは復職前と考えられる4か月児健診にて2013年6月~12月に受診する母親、約1200人を対象とする調査 ①国内旅費:実施施設との打ち合わせなどの交通費、成果発表のための国内学会参加旅費(研究協力者の費用を含む外国旅費)、②外国旅費:成果発表のための海外学会参加旅費、③調査票の印刷・封筒・郵送代、④データ入力代、⑤謝金:研究補助として資料整理やデータ分析のための必要経費(1万6千円×12か月)⑥消耗品:アンケート調査に使うボールペンなど II.保育園3~5か所の施設で園児の親、約500組(約1000人)を対象とする調査 ①国内旅費:実施施設との打ち合わせなどの交通費、成果発表のための国内学会参加旅費(研究協力者の費用を含む)②調査票の印刷・封筒・郵送代、③データ入力代、消耗品:アンケート調査に使うボールペンなど III.その他 ①研究協力者たちとの会議費
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